ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-373-LS27兵庫医科大学医科大学 救急・災害医学講座小谷 穣治 本邦の重症敗血症患者の治療では国際的に最も汎用されているSSCG2012 で推奨されていない、または言及されていない治療が保険収載され、実際に医療現場で行われている。具体的には、抗凝固療法としてのアンチトロンビン(本邦ではDICに対して適応がある)、静脈投与免疫グロブリン(Intravenous Immunoglobulin、IVIG)の投与はSSCG では行わないことが推奨され、急性血液浄化法や蛋白分解酵素阻害薬は言及されていない。日本救急医学会Sepsis Registry 特別委員会では、2010年6 月1 日から2011年5月31 日までの1年間に、日本救急医学会Sepsis Registry 委員会委員の所属する15 施設の集中治療室に入院し、登録されたsevere sepsis 症例に関する多施設共同前向き調査(JAAM SR Advanced 、Japanese Association of Acute Medicine-SepsisRegistry-Advanced version の略)で対象となった624 例のデータを解析した。全体では、静脈投与免疫グロブリン(IntravenousImmunoglobulin、IVIG)の施行率が34.6% と最も高く、また、septic shock 症例では44.0% と、より重症例で投与されていた。国際的にはIVIG の効果が認められていないものの、本邦ではIVIGが保険収載されているためと考えられる。引き続きアンチトロンビン(antithrombin)が28.4%、蛋白分解酵素阻害薬(protease inhibitor, PI)が19.4%、リコンビナントトロンボモジュリンが17.6%のように抗凝固療法が続き、シベレスタットナトリウム水和物も15.7%あった。一方、血液浄化療法では、non-renal CHDF(腎不全治療を目的としない持続的血液濾過透析)が15.6%、high flow-volume CHDF(調査では具体的な濾過量や透析液流量は問うていない)が2.7%、polymyxin-B immobilized column direct hemoperfusion(PMX-DHP)が9.6% と比較的施行率が低かった。支持療法の施行率は選択的消化管除菌(selective digestive decontamination, SDD)が3.0%、免疫調整経腸栄養剤(immune-modulatingdiet、IMD、製品や内容は問うていない)が11.4%と著しく低かった。また、本調査、および日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会による同様の調査を合併したものを統計的に解析したところ、IVIG投与と敗血症性ショックの生存が有意に関連した。本日は、本邦で独自に行われている治療のエビデンスの整理をし、本邦疫学調査の結果を解説し、さらに我々のIVIGの基礎実験dataも紹介して、今後の新しい治療開発の方向についても触れてみたい。ランチョンセミナー 27 2月14日(日) 12:20~13:20 第6会場重症敗血症における補助療法の現況-エビデンスの整理と本邦疫学調査の結果の解説LS28慶應義塾大学医学部 麻酔学教室香取 信之 日本麻酔科学会の行った麻酔偶発症例調査(2004 - 2008)では、術中に心停止に至った2291例中、術前からの出血や術中の大量出血など出血が関与していた症例は33%を占めている。したがって止血管理は、周術期の重要課題の一つである。術中出血は比較的短時間のうちに大量出血する場合と持続的に長時間出血し結果的に大量出血となる場合に分けられるが、いずれの場合も必ず晶質液または人工膠質液による輸液療法が初期治療となり、二次治療として組織酸素供給維持・改善を目的とした赤血球製剤投与が行われる。厚生労働省の「血液製剤の使用指針」では新鮮凍結血漿や血小板濃厚液の投与は循環血液量の100%以上の出血を生じた時点が目安となっているが、最近では先行する輸液・赤血球製剤の投与によって血漿成分が希釈され、より早い段階で希釈性凝固障害が生じることが指摘されている。救急や周術期などの急性期の血液凝固障害には外科的出血による血小板や凝固因子の喪失・消費だけではなく、この希釈性凝固障害が大きく関与しているため、創部での出血原因を把握しにくくなる。急性期血液凝固異常の治療に際しては、①血液凝固異常と外科的出血の鑑別をすること、②血液凝固異常の原因と程度を速やかに把握すること、③病態に応じた治療計画を立てること、④治療効果を判定し、次の治療計画を立てること、が求められるが、ここで大きな問題となるのが血液凝固異常を評価する検査である。血液凝固は複数のセリンプロテアーゼの連続的な反応によって成立する生理現象であり、止血に必要なフィブリンの産生までにはある程度の時間を必要とする。また、中央検査室での検査には検体の採取から運搬・検体処理・測定という工程が必要であり、血液凝固系の検査は結果を得るまでに時間がかかるという認識が一般的である。しかし、救急および術中の患者は病態が急速に変化するため、検体採取から結果を得るまでの時間は病態の評価や治療方針の決定、ひいては患者の予後に大きく影響する。このような状況では治療の現場で検体採取直後に検査を行えるpoint-of-care(POC)モニターが有用である。POCモニターには、迅速性、簡便性、正確性、再現性などが求められるが、特に重要なのは迅速性である。急性期の血液凝固障害治療が全般的に経験に依存する傾向にある一因は中央検査室での検査が迅速性に乏しいところにあり、POC モニターの活用は血液凝固障害の治療を客観的な指標に基づいた、より適正な方向へと導いてくれる可能性が高い。日本においても治療現場で使用できる血液凝固POCモニターは複数存在するが、本セミナーではヘモクロン シグニチャーエリートによる凝固能評価と急性期血液凝固障害の治療について概説する。ランチョンセミナー 28 2月14日(日) 12:20~13:20 第7会場大量出血に伴う凝固異常の評価と治療