ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-358-LS3東京大学救急部・集中治療部土井 研人 敗血症・多臓器不全は集中治療領域における最も重篤な病態の一つであり、依然として高い死亡率を呈している。原因となる感染症に対する治療(早期抗菌薬投与と感染巣コントロール)が重要であることは明らかであるが、一度多臓器不全に陥ると悪循環から脱却できずに臓器障害が進展して死に至る。敗血症を契機とした多臓器不全の負の連鎖にはどのようなメカニズムが作用しているのであろうか?これまでの研究から数多くの炎症性メディエーターが様々なタイミングで上昇し、病態形成に関与していることが明らかとなっている。一方、不全臓器数が増加するに従い、死亡率が上昇することも多数の疫学的検討から明らかとされている。これらの知見は各臓器における炎症性メディエーターを介したクロストークが臓器障害を増幅している可能性を示唆する。 腎臓は生体内の恒常性を維持するための重要な臓器であるが、急性腎障害においては炎症性メディエーターの血中濃度が上昇することが知られている。さらに動物実験によって、IL-6 ? CXCL1 およびHMGB1 ? TLR4という二つの経路が急性腎障害によって惹起される肺への好中球浸潤に重要であることが示されている(肺腎連関)。また、急性腎障害によって心筋細胞におけるミトコンドリア断片化とアポトーシスが誘導され、心機能が低下することも明らかとなった(心腎連関)。多臓器不全において急性腎障害を合併した場合にはこのような負の臓器連関が誘導されている可能性が高いと思われる。 血液浄化療法は腎不全に対する腎代替療法として用いられることが多いが、特に急性腎障害に伴って著しい上昇を示す炎症性メディエーターを除去することで、先に述べた腎臓を軸とした負の臓器連関を断ち切ることが可能ではないかと思われる。IL-6やHMGB1 はPMMA 膜やAN69ST 膜によって高効率に吸着されることが報告されている。敗血症・多臓器不全における血液浄化については腎代替を超えた役割が期待されており、新たな臓器連関のメカニズム解明と臓器クロストークを介在する因子の制御が、敗血症・多臓器不全の予後改善に有用であると思われる。ランチョンセミナー 3 2月12日(金) 12:20~13:20 第4会場敗血症・多臓器不全に対する血液浄化LS4金沢大学医薬保健研究域 周術期管理学(麻酔・蘇生学)/金沢大学附属病院 集中治療部谷口 巧 劇症肝炎の基本的な病態は、広範におよぶ肝細胞壊死と肝再生不全により高度の肝機能障害を認め、全身臓器にまで障害をきたした状態である。基本的には可逆的な病態であるが、結局、肝再生が不十分なままになることが少なくなく、これ以上再生させる治療法もない状態である。治療は、①原因の究明とその治療、②肝機能の維持、③全身管理と合併症の対応がある。その中でも、肝機能維持を目的として血液浄化療法が治療法の一つとして挙げられている。 今回、劇症肝炎において行われている各種の血液浄化療法を取り上げる。従来から行われている血漿交換療法(PE)、血液ろ過透析(HDF)、さらに最近行われている高流量血液ろ過透析(High flow HDF)と我々の施設で開発し施行している持続的血漿ろ過透析(CPDF)について症例を提示し、治療法の長所、短所、施行上の工夫に関して解説していきたい。 1)血漿交換(PE) PEは患者血液を血漿分離膜で血球成分と血漿成分に分離し、こん睡起因物質を含む血漿成分を破棄するとともに、置換液を補充する血液浄化療法である。置換液としては、新鮮凍結血漿(FFP)を用いることが多い。長所としては、肝性昏睡起因物質の除去が可能であり、肝合成物質の補充も出来るということが挙げられる。短所としては、FFPに添加されているクエン酸ナトリウム負荷による高ナトリウム血症、低カルシウム血症、代謝性アルカローシスといった合併症をきたす。 2)血液ろ過透析(HDF) HDFはアンモニアなどの小~中分子量のこん睡起因物質の除去および、電解質の補正、水分出納管理に有用であり、PEとともに行われることが多い。単独で行う場合には、肝合成物質の補充目的として、FFP 投与が必要となる。患者の状況により、間欠的に行う方法と24 時間持続的に行う方法(CHDF)がある。 3)高流量血液ろ過透析(High flow HDF) 劇症肝炎においてPEとHDFを組み合わせる方法が患者の状態を改善するが、中には、肝性脳症の増悪、脳浮腫の悪化をきたす症例があることが示され、透析量のさらなる増加を目的にHigh flow HDFが行われるようになった。High flow HDFにより、意識の改善が認められ、PE とHigh flow HDFを組み合わせる方法が一般的となってきている。さらに、最近、High flow HDF とFFP の補充でも十分有用であるとの報告も認められている。 4)持続的血漿ろ過透析(CPDF)PE とHDF との組み合わせは、循環動態が不安定な患者では施行することが困難であり、また間欠的に行う場合には終了後より徐々に肝機能の増悪を認めることがある。そのような患者において我々は、PE とCHDF を組み合わせて同時に一つのカラムで24時間持続的に行う方法を考え、CPDF として施行している。CPDF はEvacure EC-2A 膜を用いて、FFP24 単位/日を用いた血漿交換とCHDF を同時に行う方法で、循環動態の不安定な患者でPE 等の血液浄化療法でも肝機能の増悪を認める患者において用いている。ランチョンセミナー 4 2月12日(金) 12:20~13:20 5会場劇症肝炎における血液浄化療法