ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-350-GD2-1 集中治療領域における痛み・不穏・せん妄管理の現状調査1)地方独立行政法人 大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター、2)学校法人鉄蕉館亀田医療大学看護学部看護学科成人看護学、3)日本赤十字社和歌山医療センター集中治療室、4)自治医科大学附属病院集中治療部、5)山口大学大学院医学系研究科救急・総合診療医学分野、6)兵庫医科大学集中治療医学科、7)筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・水戸協同病院、8)大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科救急医学講座、9)自治医科大学麻酔科学・集中治療医学講座集中治療医学部門植村 桜1)、古賀 雄二2)、吹田 奈津子3)、茂呂 悦子4)、鶴田 良介5)、西 信一6)、長谷川 隆一7)、行岡 秀和8)、布宮 伸9)集中治療領域におけるせん妄は急性脳機能障害であり、患者の予後を悪化させる独立危険因子である。痛み・不穏・せん妄に対する包括的な管理は集中治療領域における重要課題である。2014年8月、日本集中治療医学会より、重症患者管理に携わるわが国のすべての医療者が、患者の痛み、不穏、せん妄をより総合的に管理できるよう支援することを目的に、「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のためのガイドライン(以下、J-PADガイドライン)」が作成された。しかし、わが国の集中治療領域における痛み・不穏・せん妄管理の現状については、2012年度の日本集中治療医学会専門医研修施設を対象に実施した調査1)を認めるのみで、J-PADガイドライン発行後の現状は不明である。そこで、J-PAD ガイドライン検討委員会(ad hoc)が主体となり、J-PADガイドライン発行後、わが国の集中治療領域における痛み・不穏・せん妄管理がどのように変化したのかを明らかにすることを目的に、日本集中治療医学会会員(準会員含む)10,744名(医師7,077名、看護師2,904名、臨床工学技士447名、理学療法士143名、薬剤師52名、その他121名)のうちメールアドレス登録者8,957 名を対象に、インターネットを利用したアンケート調査を実施した。調査内容は、対象者の基本属性、所属施設の概要、J-PADガイドラインの認知度、活用度、J-PADガイドラインのクリニカルクエスチョンに準じた痛み・不穏・せん妄管理の現状、J-PADガイドラインの導入・管理の促進・阻害要因の53 項目であった。本調査の結果について報告する。1)日本集中治療医学会規格・安全対策委員会,日本集中治療医学会看護部会.日本集中治療医学会雑誌2012;19(1): 99-106.ガイドライン 2 2月12日(金) 10:00~10:50 第13会場J-PADガイドラインGD2-2 早期離床促進における末梢神経ブロックの役割1)愛知医科大学 医学部 麻酔科学講座、2)愛知医科大学病院周術期集中治療部藤原 祥裕1)、藤田 義人1)、畠山 登2)、木下 浩之1)、神立 延久1)、山田 満1)、佐藤 祐子1)、橋本 篤1)、赤堀 貴彦1)2013年にAmerican College of Critical Care Medicine が中心となって公表された、「成人ICU患者の疼痛、不穏およびせん妄の管理に関する臨床ガイドライン」には、患者の痛みを正しく評価し、適切かつ十分な鎮痛を施すことの重要性が強調されている。集中治療室における患者の痛みの原因・部位は多岐にわたるため、全身性鎮痛作用を有するオピオイドが集中治療室における鎮痛手段の主流であることに変わりはない。しかし、オピオイドの鎮痛効果は体性痛や体動時痛にはあまり有効でないといわれている。また、オピオイドの投与は悪心・嘔吐、便秘、鎮静、呼吸抑制などさまざまな副作用を伴い、場合によっては患者の早期離床・回復の妨げとなる。とくに、外傷、術後の胸腹部痛は深呼吸、咳嗽反射の障害となり、呼吸器系合併症の発生を増加させる。四肢の外傷、術後においても、不十分な鎮痛による交感神経緊張は血圧上昇、頻脈、血糖値の上昇などの原因となり、患者の治療を複雑かつ困難にし、場合によってはリハビリの開始を遅らせる。 以前から、外傷、術後の痛みを和らげるため、集中治療室でも硬膜外ブロックが用いられてきた。硬膜外ブロックは強力な鎮痛法であり、体性痛、体動時痛にも効果的である。しかしながら、硬膜外ブロックには交感神経遮断による血圧低下、硬膜外血腫・硬膜外膿瘍による両下肢麻痺、運動麻痺などの合併症、副作用を起こす可能性がある。重症患者では、不安定な循環動態、出血傾向、敗血症など、硬膜外ブロックの実施を躊躇させる病態が併存している場合が多く、必ずしもすべての重症患者が硬膜外鎮痛の恩恵にあずかることができるわけではない。 近年、超音波ガイド技術の発達を契機として、末梢神経ブロックが手術麻酔領域で頻繁に用いられるようになってきている。末梢神経ブロックは、患者の痛みを効果的に取り除くが、硬膜外ブロックのように硬膜外血腫、硬膜外膿瘍に伴う両下肢麻痺を引き起こす可能性はほとんどない。また、交感神経も遮断しないため血圧低下を起こしにくく、硬膜外ブロックが実施困難な患者にも使用可能である。もちろんオピオイド投与に伴うさまざまな副作用を起こす可能性もない。オピオイドや硬膜外ブロックによる鎮痛が不十分あるいは困難な場合、第三の鎮痛法として集中治療室で末梢神経ブロックが活用できる場面は決して少なくない。 本発表では、早期離床促進の面に焦点を当てながら、集中治療室における末梢神経ブロックの有用性に関して概説する。