ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-344-CR16-1 敗血症診療改善のために(Global Sepsis Alliance委員会報告)国立成育医療研究センター病院集中治療科中川 聡 敗血症は、silent killerである。日本の年間の死亡者のうち、敗血症が原因である者は、約11,000人と発表されている。しかし、日本の死亡統計では、がんなどの基礎疾患がある患者が敗血症で死亡した場合、死因は基礎疾患となるのが一般的である。こういった状況を鑑みると、死亡に敗血症が関与している患者は、上記数字の数倍から10 倍程度存在すると推察される。一方、重症敗血症の死亡率は約30%である。したがって、日本では、年間20~30万人程度、あるいはそれ以上の敗血症患者が存在しうる。敗血症は重症化しやすく、多くの死亡に関与している。しかし、その問題が認識されていないことから、silent killerと称される。 重症化しやすい敗血症においては、早期認識、早期の治療開始、重症患者に対しての集中治療、臓器障害に対しての補助療法、そして生存者に対してのリハビリテーションや長期支援といった連携が重要である。初期診療に従事している一般医家や救急外来で診察をする医師、あるいは、入院中の病棟で最初に気づきうる看護師や医師が早期に敗血症に気づき治療を開始し、重症化した場合は集中治療室での管理、臓器障害が生じた場合の専門診療科の医師の支援といった一連の連携が求められる。回復期においては、機能障害のみならず認知障害などに対する積極的対応も求められる。また、社会復帰に向けての長期支援も不可欠となる。このように「敗血症」は、集中治療関係者のみが知っていればよい病態のではなく、一般医家並びに多くの専門の医師、さらには、看護師、理学療法士、臨床工学技士、薬剤師など多職種の方々にも知っていただきたい病態なのである。 敗血症診療改善のためには、医療機関での診断・治療のみがすべてではない。一般の市民の方々にも「敗血症」という言葉とその病態をご理解いただくことは、早期の気づきという点で重要である。市民の方々に特徴的な症状を知っていただき、変だなと感じたらすぐに医療機関を受診していただける体制を構築する必要がある。また、一部の敗血症はワクチンによって予防可能である。こういった知識の普及も重要である。 当委員会では、敗血症診療において、集中治療を核としながらも、予防からリハビリテーションといった多岐にわたる専門領域の医療職種の方々に、敗血症に対してさらに理解を深めていただくためのセミナーを展開している。また、一般市民の方々に向けての情報発信も行っている。今後は、厚生労働省や世界保健機関などにもこの敗血症の問題点を認知していただき、敗血症患者を減らし、さらには敗血症による死亡を減少させることが当委員会の目指すところである。委員会報告 16 2月14日(日) 9:00~9:50 第13会場Global Sepsis Alliance 委員会報告CR16-2 市民への情報発信としてのホームページ1)東海大学医学部付属八王子病院、2)Global Sepsis Alliance委員会井上 茂亮1,2)感染により臓器障害を引き起こす重症敗血症の罹患率は世界中で増加しており、その死亡率は先進国においても約30%と高い。また65 歳以上の高齢者の敗血症の3ヶ月死亡率は成人と比較して約4 倍高く(Inoue et al. Critical Care 2014)、超高齢化社会に突入した本邦において敗血症の予防と生存率改善に向けた包括的な対策は極めて重要である。しかしながら一般市民において敗血症の認知は未だ低く、医療従事者においても敗血症の病態・予防・治療に関して正確な知識は十分共有されていない。また個人のホームページやブログなど敗血症に関する断片的な情報は公開されているものの、本邦では公式の敗血症ホームページは存在しなかった。このため2015 年9月、日本集中治療医学会Global Sepsis Alliance 委員会では、市民および医療従事者向けに敗血症公式ホームページ SEPSIS JAPAN を作成し公開した(http://sepsisjapan.com/wsd.html)。このホームページでは一般の方にもわかりやすく敗血症の病態を解説するとともに、私達GSA委員の取り組みを紹介している。またこのホームページからリンクしているフェイスブックページでは9月13 日の世界敗血症デーイベントの様子、一年に3回開催される敗血症セミナーの予定など、敗血症に関する最新情報を随時公開することで、市民および医療従事者への情報発信を行っている。本発表では、敗血症公式ホームページの立ち上げの取り組みから啓蒙活動状況を報告するとともに、今後のホームページの活用や展開について提案したい。