ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-339-CR13-5 DNARとPOLST が集中治療に提起する諸問題―3学会合同ガイドラインを踏まえて日本集中治療医学会倫理委員会貝沼 関志、丸藤 哲、石川 雅巳、則末 泰博、澤村 匡史、木下 浩作、田村 高志、木下 順弘、橋本 圭司、氏家 良人日本集中治療医学会は2014 年11 月に「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3 学会からの提言」を日本救急医学会、日本循環器学会とともに策定した。このガイドラインでは救急・集中治療における終末期での治療の差し控え・減量・終了の具体的な選択肢として、心停止時に心肺蘇生を行わないことを、医療チームが患者や家族と合意して行うという選択肢があることを示している。この選択肢をとりうる場合の根拠として、それが、患者の意思に沿った選択であること、患者の意思が不明な場合は患者にとって最善と考えられる選択であることを明記している。一方、JRCガイドライン2015 では、第8章 普及教育のための方策のなかで、このガイドラインが既に集中治療室等で治療されている急性重症患者を対象としているものであり、救命処置や集中治療を開始する際の倫理的な手順を示しておらす、具体的に患者の終末期に対して集中治療を開始する倫理的手続きを想定したものでない、と指摘している。これに関して日本集中治療医学会は2012年10 月に終末期医療に関して市民の皆様への提言として終末期に至った場合の事前の意思を表明しておくことを推奨している。一方、日本臨床倫理学会は2015年にPOLST(DNAR指示を含む)作成に関するガイダンス、書式の雛形を提示している。これは、「生命を脅かす疾患に直面している患者」の医療処置に関する医師による指示書であり、概ねa)緩和的ケア処置の優先、b)集中治療を含まない医療処置、c)集中治療を含む医療処置、の3段階に分けた指示を記載している。これまでわが国ではDNARの名のもとに蘇生処置以外の治療やケアを差し控えるということがしばしば生じており、POLSTが蘇生処置を含めた更に広範囲の医療やケアに関する患者の事前の意思を受けて医師が作成しておく文書として普及するならば意義あるものと考えられる。ただし、POLST の多くがICU入室前に作成されることが想定されることから、最新の集中治療に関しての知識不足や患者への伝達不足などにより本来集中治療で恩恵を受ける可能性のある患者がICU 入室前のPOLST 記載のために集中治療を受けられなくなる可能性を排除する努力が必要であり、最新の集中治療に精通した医師(集中治療専門医等)がPOLST作成に関わる必要性を認識しておかなればならないだろう。また、POLSTは集中治療を検討する時期あるいは集中治療入室後に変更が可能でありこの時点で集中治療医がそれに大きく関わる必要がある。以上から、日本集中治療医学会が、「3 学会合同ガイドライン」に加えて、ICU入室前後において終末期に至る可能性のある患者の集中治療を開始する倫理的手続きについて議論を行い提言することは、「市民への提言」の延長線上に当然なされるべきものである。今回のDNARおよびPOLST と関連させて集中治療を開始する倫理的手続きに関する議論を本学術集会で深めることは有用であろう。