ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-313-PC9-1 High-flow nasal cannula酸素療法岡山大学病院 麻酔科蘇生科岡原 修司集中治療室(ICU)での呼吸管理は日々進歩している。その中でも非挿管患者の呼吸管理を大きく変化させたといっても過言ではないのが、High-flow nasal cannula oxygen 療法(HFNC)である。本邦では2012 年より導入され、非侵襲的陽圧換気(NPPV)と比較して同等の臨床効果が有りながらも、より低侵襲的であるため、それまでNPPV を施行していた症例をHFNC で管理する機会が増加している。当院ICU でもHFNC 導入前後で、NPPV 施行症例がほぼ半減(62例/年→34 例/年)した。HFNCの特徴は、1.自由に酸素濃度の設定が可能であること、2.十分な加温加湿が得られること、3.流量に応じた軽度の気道内陽圧による吸気サポートとPEEP 効果があること、4.解剖学的死腔のウォッシュアウトによる呼吸回数の減少と呼吸仕事量の軽減が得られることである。多くの研究で、HFNCによる呼吸回数の低下や動脈血液ガス分析など呼吸パラメーターの改善、呼吸困難感の改善などの臨床的な効果が示されている。また、近年NPPVと比較した臨床研究でもHFNC の有用性が報告されている。急性低酸素血症に対する効果を評価したFLORALI studyでは、HFNC群では呼吸管理期間の短縮と死亡率の低下を示した。またPaO2/FIO2 ratio< 200の重症症例においてHFNC群で挿管率が有意に低い結果を示した。心臓血管外科術後の低酸素血症を対象としたBiPOP study でも、NPPVと比較してHFNC の治療効果の非劣性が報告されている。実際の臨床現場では、酸素と空気の配管があれば場所を問わず使用することが可能で、例えば気管支内視鏡検査や心臓カテーテル検査中にも簡単に導入することができる。またNPPVと比較して、装着に伴う不快感が少ないのが大きな特徴である。NPPVではマスクフィッテングが問題となることが多く、適切なマスクフィットが得られないと皮膚障害や呼吸器との非同調、不穏の原因となり得る。HFNCではこれらの問題点やそれに対する鎮静薬を回避できることも大きな利点であると言える。HFNCはNPPV と同等以上の臨床効果をもたらし、簡便に施行可能な上に、より非侵襲的で、すぐれた忍容性を有しているため、急性呼吸不全に対する第一選択はHFNC が適切であると考える。Pro-Con 9 2月13日(土) 9:00~9:50 第3会場High-flow nasal cannula 酸素療法 VS. NPPVPC9-2 NPPVかわぐち心臓呼吸器病院竹田 晋浩HFNCは快適に酸素療法を受けられ、より侵襲的治療を避けられる可能性があり、最近よく用いられる治療方法である。利点として、飲食や会話ができる、睡眠時の妨げにならない、早期にウィーニングや回復が可能。医療側からの利点は、患者からの不快の訴えが減少、酸素供給装置やインターフェイスを交換しなくて済む、患者とのコミュニケーションがとりやすい、非侵襲的に高い治療効果が得られ、侵襲的治療回避の可能性が高まる。ある程度の有効性は認められているが非常に限定的である。I型呼吸不全では欠点として、PEEPはかけられるが非常に低い、超重症例では対応が困難、口呼吸の場合、酸素濃度が低下する、インターフェースが顔の動きにより適切な位置からずれることがある、いつNPPVに切り替えるのか判断が困難。II型呼吸不全では軽症は有効なことがある。しかし急II型呼吸不全に対するNPPVの有効性が確立しているため、その使用は非常に限られる。このセッションではNPPV が現時点では優れた治療方法であることを述べたい。