ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-311-PC7-1 敗血症に対する血液浄化方法 sepXiris八戸市立市民病院 臨床工学科小橋 秀一2014年7月にCRRT用のサイトカイン吸着膜であるsepXirisが発売となった。「持続緩徐式血液濾過器2特殊型」という新たな医療材料名称が設けられ、適応に“ 重症敗血症及び敗血症性ショックの患者”が追加されている。それ以前の敗血症に対する血液浄化法は、エンドトキシン吸着のPMXやサイトカイン吸着のPMMA-CRRT が各施設で行われていており、治療を行う際の注意点としてPMX は直接血液吸着法のため凝固トラブルを起こしやすいこと、PMMA-CRRT は吸着面積を大きくするためにプライミングボリュームが増大すること、吸着原理がはまり込みのため濾過によるhemofilter の目詰まりを起こすことがあった。AN-69ST 膜であるsepXirisは、通常のCRRT を行いながら浸透吸着により、少ないプライミングボリュームでも効率の良いサイトカイン除去能力を有し、高い透水性能を持つため濾過を行っても目詰まりの心配が無いという特徴がある。当院の敗血症に対する血液浄化方法の選択として、病態の基本は高サイトカイン血症であるということに注目し、humoralmediater networkを断ち切ることを目的としてsepXirisによるサイトカイン吸着除去を行っている。当院がPMXではなくsepXirisを選んだ理由として、DAMPS の概念からPAMPSの一つに過ぎないエンドトキシン除去より、Alarminなども含め産生されたサイトカインを除去する方が合理的と考えたことにある。サイトカイン吸着膜による比較となるが、当院が敗血症患者に対してCRRT を施行した28 日後救命率は、PMMA 膜でCH-1.8W で50%(N=34)、sepXiris100では77%(N=44)となりsepXirisの有用性を感じられた。(log-rank test, P< 0.05)さらに、敗血症以外のCRRT施行患者の多くも高サイトカイン血症状態と考え、敗血症の診断の無い患者に使用した結果、28日後救命率はCH-1.8W で58%(N=40)からsepXiris100で83%(N=24)とこちらも上昇した。(log-rank test, P< 0.05)これらから、敗血症をはじめとした高サイトカイン血症に対して、サイトカイン吸着膜を使用した積極的除去の重要性を再認識し、現在はほぼすべてのCRRT 患者に対してsepXirisを使用している。Pro-Con 7 2月12日(金) 8:30~9:20 第10会場敗血症に対する血液浄化療法 sepXiris VS. PMXPC7-2 敗血症に対する血液浄化療法:PMX小牧市民病院 臨床工学科神戸 幸司現在、敗血症の定義は改定されると言われているが、日本版敗血症診療ガイドラインによる定義では、「感染によって発症した全身性炎症性反応症候群 (Infection-Induced SIRS) とあり、またSIRS の定義の4項目中2項目以上が該当する場合」とされている。また、「判断には補助的指標を参考にする。」と示され、更に敗血症への全身管理と補助療法の中で重症敗血症に対する血液浄化療法(RRT、CRRT)や敗血症性ショックに対するPMX等の項目が記載されている。しかし、血液浄化療法に関する明確な方向性は示されていないのが現状である。特にPMX に関しては敗血症性ショックの病態での敗血症性炎症反応を惹起する病原体関連分子パターンの一つに過ぎないエンドトキシン(ET)のみを除去する治療が有効かとの意見もある。しかし、PMXの有効性に関しては適正なタイミングで施行することにより、敗血症に伴う諸症状、臓器障害、生命予後を改善することが国内外で多数確認されているのも事実である。今後は、ET除去の生物学的意義が明確化されると共に、PMXの効果が得られる可能性のある患者に対して施行タイミングの見極めが出来るようになることが必要となるもの考える。PMX の保険算定基準のET血症であるが、ET値を正確に検出する測定系が確立されておらず本邦の比濁時間分析法は、一部の先端的施設を除き診断に十分な感度とは言い難い現状である。しかし、作用機序の中心は血中からのET 除去であるため、PMX 治療の適応の判断基準となるET レベルの測定は必要である。海外では、ETレベルの測定としてEndotoxin Activity Assay (EAA)が用いられており、敗血症治療との関係を検討した論文が多数報告されている。EAAは米国FDAで診断薬として認可されており、本邦においても複数の医療機関で臨床検討されている。当院でも、PMXを適正なタイミングで施行するために敗血症症例において、EAAと各種バイオマーカーを測定している。敗血症症例への血液浄化療法の提供の際、抗凝固の管理、交換時期、単独使用かCRRTとの併用かといった施行管理をCEとしての視点において、高ET血症状態で尿量が確保されていれば、ET除去目的が主体のPMX単独使用を選択する。また、腎障害や肝障害など多臓器不全の状態であれば、腎代替療法としてのCRRTの併用を考慮する。その際、サイトカインの除去目的であれば、これに続く選択肢としてAN69ST やPMMA膜の適用といった判断が必要となる。今回、PMX施行例でのEAA 及びET 値、各種バイオマーカーの変化とPMX導入基準、治療効果等を含め報告すると共にPMXの臨床効果について繊維状吸着材(PMX-F)表面への血液細胞吸着、活性化好中球の除去などPMX による直接的な吸着によるものか、一連のカスケード反応の一部反応過程の阻害の結果生じるET 吸着以外の機序についても文献的考察を加える。