ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-310-PC6-1 重症小児診療では血液培養を2 セット松戸市立病院 小児医療センター 小児集中治療科岡田 広重症小児診療において、血液培養を2 セット以上採取することは重要であると考える。以下、1,現在推奨されている内容、2,血液培養のセット数を増やすことの臨床的意義、3, 実際の臨床に適用するための方法、に関して順に述べる。1, 重症小児の敗血症診療に際して血液培養のセット数を比較検討した報告はないものの、小児集中治療領域での海外の成書や、本邦における専門家の見解として、抗菌薬投与前の血液培養は2セット以上の採取が推奨されている1),2)。これは、成人での推奨と同様3),4)であり、成人での知見を小児領域にそのまま外挿可能かどうかは議論の余地があるとしても、重症敗血症診療にあたって起因菌の同定に努めることの重要性に異論はないと思われ、このための方策として血液培養を2セット以上採取するという推奨は、成人か小児かに関わらず理にかなっていると考える。2,重症小児に対する血液培養のセット数で我々の診療が変わり得るかということは興味深い議論であるが、敗血症診療に限定した報告ではないものの、小児において血液培養の採取量やセット数を増やすことで培養の陽性率が上昇するという報告は散見される5)~11)。これらの報告を敗血症診療においても適用可能だとすれば、血液培養の採取量やセット数を増やすことで起因菌の判明率を上昇させられる可能性はあり、これに基づいて起因菌ごとの抗菌薬の変更やde-escalation、投与期間の決定といった臨床的に非常に重要な方針変更がなされる可能性がある。このことは、目の前の患者の予後はもちろん、未来の患者の予後をも改善させる可能性のある行動である。3,重症小児に対する実臨床で、血液培養を2セット以上採取することはときに困難である。しかし、各種点滴(末梢静脈ライン、動脈ライン、中心静脈ラインなど)の確保時にも培養検体を採取できることの意識を徹底することで、実際の臨床現場においても治療早期に血液培養2セット以上を採取することは十分に可能である。また、培養採取のために抗菌薬が必要な児に対する治療開始が遅れてはならないことは言うまでもないことであるが、一方で小児集中治療室の普及/増加により、抗菌薬投与開始をあせることなく安全性を担保したうえで「待つ」ことも場合によっては可能であると考える。そのような状況では全身状態の慎重な観察と適切なタイミングでの治療介入を前提として、血液培養の追加採取をぜひ検討すべきと思われる。1)日集中医誌 2014;21:67-882)ROGERS’ TEXTBOOK OF Pediatric Intensive Care3)日集中医誌2013;20:124-1734)Crit Care Med 2013;41:580-6375)J Clin Microbiol 1979;9:88-926)Pediatrics 2007;119:891-8967)Pediatr InfectDis J 1997;16:381-3858)Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed 2002;87:F25-289)J Clin Microbiol 2000;38:2181-218510)J Clin Microbiol2009;47:3482-348511)Pediatr Blood Cancer 2015;62:1421-1426Pro-Con 6 2月12日(金) 9:30~10:00 第7会場血液培養小児で2セット VS 1セットPC6-2 こどもではしっかりとれば1 セットで良い。実際ほとんどが1 セット兵庫県立こども病院 小児感染症科笠井 正志1)ガイドラインでの記載Surviving Sepsis Campaign guidelines(SSCG2012)では、「Blood cultures should be obtained beforeadministering antibiotics when possible, but this should not delay initiation of antibiotics.」と推奨されているが、解説には一切2セット以上必要であるという記載は存在しない。また、日本集中治療医学会小児集中治療委員会編集による「日本での小児重症敗血症診療に関する合意意見」には、「抗菌薬開始前に血液培養を2 セット以上採取する。ただし,このために抗菌薬投与が遅れないようにする。」と意見されている。しかし、2 セット以上採取することに関する解説は存在しない。2)小児感染症の教科書での記載小児感染症の教科書とされるPrinciple and practice of Pediatric Infectious Diseases(fourth edition)の血液培養に関する記載は、「Although a single sampling may be sufficient for many patients with bacteremia, multiple samples are appropriate incertain circumstances . と記載があるのみ、積極的に推奨しているとは考えられない。3)臨床研究採取量を考慮した上での、複数セットと1 セットを直接比較した臨床研究(ランダム化比較試験、前向きコホート研究)は存在しない。1 本のボトルでは偽陰性が37~44% あり、複数ボトルを使用することで検出率は上がるという報告がある(J Clin Microbiol. 1991;29(2):359-62. PediatrInfect Dis J. 1994;13(3):203-6.)。また採血量2ml × 2 セットは、2ml × 1 セットよりも培養陽性率が高い(J Pediatr. 1996;128(2):190-5.)という報告も存在する。しかし、これらの陽性率向上の理由として、セット数よりも採血量が関与している可能性があるため、複数セットが真に陽性率向上に有用か結論は出ていない。現実的な問題として、小児は採血が困難であり採取量を規定して行う血液培養の研究は困難である。上記1)~3)を勘案すると、陽性率向上のみを目的として、小児とっては侵襲的な検査である採血を「ルーチンに」複数セット行うのは、児や採取者や負担をかけ、かえって血液培養採取がされなくなる可能がありえる。現状考えるべきことは、1 セットでも陽性率を向上させることが最優先である。ボトルに記載している量を適切に接種する(Pediatrics 2007;119:891-6)こと、嫌気ボトルの併用(Korean J Lab Med. 2011; 31(2):101-6. Pediatric Infect Dis J. 2002; 21(5):443-6.)することから始めてみるべきである。まずは気軽にかつより適切な方法を現場に周知させることが最優先である。そのためには小児血液培養採取に関する実践的なガイドラインが必要である。