ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ページ
291/910

このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている291ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-289-PD2-3 敗血症関連脳症は脳波でとらえられるか?システマティック・レビュー京都府立医科大学 麻酔科学細川 康二敗血症性脳症の病態生理は複雑である。敗血症性脳症と診断される患者で、脳波や誘発電位に異常が見られるとの報告があるため、これらが脳症の診断や予後判定にどれほど寄与するかについて、システマティック・レビューを行い検討した。【方法】脳波や誘発電位とセプシス等を検索語としてPubMedを電子検索した。このリストから、成人を対象として脳波が敗血症性脳症の診断にどれほど影響を与えるかを調べた臨床論文を選んだ。【結果】17の論文を研究対象にした。セプシス時の脳波異常は、background異常が12-100%、triphasic wave が6-12%と報告されていた。2研究で、epileptiform discharge や electrographic seizure が集中治療を要するセプシス患者で非セプシス患者に比べより多く見られた。1研究で、バックグラウンド異常が脳症の重症度に関連した。徐波化やsuppression、triphasic wave が死亡率の増加に関連した。幾つかの研究で、quantitative EEG 解析の結果や誘発電位の所見が、セプシス患者と非セプシス患者で異なっていたが、患者転帰は評価されていない。【結論】脳波や誘発電位の異常は、敗血症患者の多くで見られる。しかし、脳波が敗血症性脳症の診断確率を上げ、予後を適切に判定することを示す証拠は十分ではない。PD2-4 敗血症関連脳症に対する神経モニタリング日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野伊原 慎吾、櫻井 淳、平林 茉莉奈、小松 智英、杉田 篤紀、山口 順子、木下 浩作敗血症関連脳症は感染に起因したSIRS の結果生じたびまん性脳障害と考えられており、頻度は敗血症患者の9-71%とされている。神経学的所見はせん妄から昏迷、不穏などを示し、より重症の場合に昏睡となり、GCS8点以下の症例の死亡率は63%との報告もある。敗血症関連脳症の原因は多くの病態を含み。血液脳関門の破綻、神経伝達に関わるアミノ酸の不均衡、脳内微小膿瘍、サイトカイン・酸化ストレスの影響、肝腎など多臓器障害の影響など多因子が転帰に影響する。敗血症関連脳症に対する特別な治療指針はなく、現時点では敗血症そのものの治療と支持療法を行っているのが現状である。敗血症患者は種々の原因で脳血流が低下する。低血圧による血圧の低下の他に、炎症や過換気による脳血管の収縮により脳血流低下が引き起こされる。また血管内皮障害による脳微小循環障害もみられる。脳血流が低下した結果、Cerebral metabolic rate of oxygen(CMRO2)に見合うだけの酸素供給が得られない可能性がある。通常、脳血流が低下するとautoregulation が働き脳血流を維持するように働くが、このような敗血症患者ではautoregulation が障害されている症例もみられる。敗血症治療を成功させるためには全身臓器の管理が必要であるが脳をターゲットとしたモニタリングについての報告は少ない。当施設ではこれまでも積極的に敗血症患者のモニタリングとして、「脳指向型モニタリング」を行ってきた。その結果、脳組織酸素飽和度が低下する症例や脳波の徐波化を示す症例があり、全身病態の改善と共に正常化する症例が確認された。頭部MRIを施行できた症例の中で、大脳基底核の信号異常を認める症例を経験した。この症例では経過中に遷延する低血圧・低酸素状態を合併しており、「脳指向型モニタリング」での敗血症関連脳症の解明が今後の課題となる。本セッションでは、当施設で経験した敗血症患者に合併した意識障害患者に対してMRI 検査、脳波の持続モニタリング、脳酸素飽和度測定を行った具体的な症例を提示して、敗血症関連脳症での「脳指向型モニタリング」とその必要性について言及する。