ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-286-PD1-3 小児けいれん重積型脳症に対するICU 治療とサイトカイン・ケモカイン1)岡山大学 大学院 小児医科学、2)岡山大学病院 高度救命救急センター野坂 宜之1)、畑山 一貴1)、クナウプ 絵美里2)、塚原 紘平2)、氏家 良人2)、森島 恒雄1)【背景】急性脳症はサイトカインストーム型、神経興奮毒性型(けいれん重積型を含む)、代謝異常型の大きく3つに分類されている。今世紀初頭に多発したインフルエンザ脳症ではサイトカインストームの関与が積極的に疑われ、厚生労働省研究班インフルエンザ脳症ガイドラインはこれを標的として作成された経緯がある。当院ではこのガイドラインをもとに、小児急性脳症全般に対して34℃48時間低体温療法、ステロイドパルス、大量ガンマグロブリン、エダラボンを主軸とした脳保護・集中治療管理を提供してきた。最近、低致命率(約5%)である一方で高い確率(約25%)で神経後遺症をもたらす「けいれん重積型脳症」が問題になっている。しかし、ガイドラインに示された治療法のサイトカインストーム型以外の脳症に対する有効性は明らかではない。そこで、我々は当科に入院し上記治療を受けた「けいれん重積型急性脳症」患者を後方視的に複数の側面から検討した。本発表では、特にサイトカイン・ケモカインの推移について神経学的転帰も含めて論じ、今後の課題を抽出・議論する。【方法】対象はけいれん重積型脳症として上記治療を施行し、経時的に血清検体が保存されていた6例(1回目のけいれん重積エピソード後に介入した4例と、2 回目のけいれん重積エピソード(2相目)後から介入した2例)。治療介入前に採取した髄液・血清に加え、低体温療法中と復温完了後に採取した血清のサイトカインプロファイルを、マルチプレックスアッセイキットを使用して作成した。さらに、そのプロファイルと神経学的転帰(発症後6ヶ月時点のPCPCを含む)との関連性を評価した。【結果】2相目のエピソードを呈した2例に神経学的後遺症(6ヶ月後PCPC:2と4が各1例)を残した。1 回目エピソード後に介入した4 例は全例PCPC1 であった。治療前時点では血清、髄液ともに各種ケモカイン(MCP-1, IP-10, IL-8, MIP1a)が上昇していた。治療介入により血清中のサイトカイン・ケモカインは抑制されたが、神経学的後遺症群では復温完了後にケモカイン(MCP-1, IL-10, MIP1a)が再び上昇した。【結論】当院の脳症治療戦略は2相目エピソード後のけいれん重積型脳症例に対して改善の余地があり、ケモカインが治療標的の一つの鍵であるかもしれない。なお、サイトカイン・ケモカイン動態に限らず、レドックス制御など複数の側面から病態や治療を検討していくことが重要である。また、脳症の分類に応じた治療戦略の再構築が必要である。PD1-4 小児急性脳症の治療と予後の検討ー当院における方針の決定と治療の変遷ー熊本赤十字病院 小児科三浦 義文、平井 克樹、小原 隆史、市坂 有基、大平 智子、武藤 雄一郎【背景】小児急性脳症に対する脳低温療法は現時点で効果が期待されている治療法である。しかし、温度管理設定や併用する治療も施設によって様々で、当院においても治療方針は少しずつ変化させているのが現状である。【目的】急性脳炎・脳症に対する治療の変化によって、患者の予後に変動が見られるか検討する。【方法】2006/6/1-2015/5/31 の過去9年間に急性脳症の診断にて当院に入院した患者37例。サイトカイン型7 例、興奮毒性型26 例、分類不能4 例であった。興奮毒性型のうち低体温療法を施行した重症例17例を後方視的に検討した。予後判定因子にはPCPCを利用した。【結果】PCPC1点が2例、2点が9例、3点が6例であった。4 -6 点の例は認めなかった。治療は低体温+ステロイドパルス+バルビツレート療法、低体温+バルビツレート療法、平温+バルビツレート療法など、治療時期によって変遷が見られたが、治療予後には明らかな差は認めなかった。【考察】低体温療法+ステロイドパルスの併用では、感染などの合併症の増加を示唆する報告もある。今回の検討においては、平温療法が積極的な冷却と同等の効果がある可能性が示唆された。当院での治療合併症等についても合わせて報告する。小児急性脳症は症例数が多いわけではなく、現在エビデンスに基いた確立した治療法と言えるものはない。そのため各施設での経験に合わせた治療がなされているのが現状である。診断・予後評価についても統一されているとは言いがたく、施設間での比較検討自体も困難であることがエビデンスの集積をさらに困難としている。今後多施設での統一した基準が作成されることが望まれる。