ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-284-JS2-5 普及・教育のための方策(EIT)1)日本赤十字社医療センター 麻酔科、2)帝京大学福岡医療技術学部医療技術学科、3)京都大学環境安全保健機構健康管理部門/ 附属健康科学センター加藤 啓一1)、漢那 朝雄2)、石見 拓3)CoSTR2015 EITの治療勧告はこう変わった科学的な検証に基づくガイドラインの改訂が心停止傷病者の救命率向上に結実するためには、蘇生教育およびシステムレベルの普及が不可欠である。普及・教育についてレビューをするEIT章がCoSTR2010において創設され、求められるレベルに応じた医療従事者のチーム内でのトレーニングの重要性と、データに基づく継続的な質向上の重要性を掲げている。初めての改訂となるCoSTR2015では17のPICOが選定され、日本版ガイドラインではBLSから3つのPICOをEITに移動させ、20のPICOを取り扱った。CoSTR2015EIT治療勧告の主な変更点・トレーニングにおけるCPR フィードバック器具の利用は、技能習得に有用である。・1~2 年の再トレーニングサイクルは、BLS/ALS技能を維持するには十分ではない。・質の評価と改善を進めるシステムを導入するべきである。・データに基づくデブリーフィングは、チームの質改善の助けとなる。・院外心停止を疑う事案の情報提供に、スマートフォンなどソーシャルメディアを活用する。・心停止疑い事例に対し、通信司令員は通報者に胸骨圧迫のみの心肺蘇生を指導する。JRC蘇生ガイドライン2015「普及・教育のための方策」はこう変わった救命に影響するシステムの要因普及・教育は、医療機関だけではなく、厚生労働省、総務省、文部科学省、消防機関、日本赤十字社等が関わる領域である。EIT作業部会では、わが国の事情を鑑み、院外心停止の社会復帰率を高めるための方策、PAD プログラムに関わるわが国におけるAED 普及の現状と課題、口頭指導の現状と改善にむけた取り組みなどいくつかの重要なトピックスを補強した。特に、院外心停止の社会復帰率を高めるための方策の中では、わが国の特徴としてJRC 蘇生ガイドライン2010 に記載した胸骨圧迫のみのCPRトレーニングの普及に加え、市民に対する心停止判断の教育、学校におけるBLS教育の普及について具体的に言及し、市民による心肺蘇生のさらなる実施率向上を目指した。また、通信指令員を含めた口頭指導実施者に対する教育と継続的な質の改善の重要性についても触れた。心停止に陥るリスクのある市民・院内患者の認識と予防突然の心停止の原因となり得る活動状況・影響する環境要因、特に窒息、入浴関連死、熱中症、運動中の心停止、心臓震盪、アナフィラキシー、偶発的低体温症、電撃、雷撃など、防ぎうる心停止の原因となり得る要因を紹介し、心停止の予防の重要性を強調した。救命処置に関する倫理と法アドバンス・ディレクティブの項を強化するとともに、バイスタンダーの救命処置への参加をさらに促すための倫理的、法的課題について言及した。JS2-6 今後の課題国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門田原 良雄「記録、それは破られるためにある!」とスポーツ界では言う。かつて、「ガイドライン、それは破るためにある!」と偉人が言った。「ガイドラインを破るとはどういうことか?」と大多数が疑問に思うだろうが、その説明は、ガイドラインとは最新のエビデンスの集大成であるから、その殻を破るような仕事をしなければ新しいエビデンスは誕生しないということであった。決してガイドラインに記載してあることを否定するのではなく、それを前提として次の仕事をしなさいという若手研究者に対するメッセージである。そもそもガイドラインとは非専門領域の医療従事者への道しるべとなるものであり、ガイドラインの利用方法の多くは推奨度に基づいた日常診療の実践ということになるが、ガイドラインには次のガイドラインに対するメッセージが含まれている。わが国でも2015 年10 月16 日にILCOR(International Liaison Committee On Resuscitation:国際蘇生連絡協議会)によるCoSTR(Consensus on Science with Treatment Recommendations:最近のエビデンスに基づいた科学と治療勧告についてのコンセンサス)に基づいたJRC(日本蘇生協議会)蘇生ガイドライン2015がオンライン発表された。このガイドラインの大きな特徴は、Knowledge Gap(今後の課題)が記載されていることである。ガイドラインは論文に基づいた最新のエビデンスを集大成した過去の記録であり、参考文献となる論文に記載されている結果から逸脱することのない各国共通の推奨度が記載されているが、このKnowledge Gap には未来へのメッセージが含まれており、自由度が大きい。すなわち、わが国の各学会から参集した各担当者の思いが込められている。ガイドラインが発表された直後の今こそ、Knowledge Gap を読み、わが国の総力を集結して次の蘇生ガイドライン2020 への挑戦を始める時期である。本講演では主なKnowledge Gap を紹介することで会場の聴衆がそれぞれの立場で次の5 年間の挑戦内容を連想していただき、明日からの日常診療が輝かしいものとなれば幸いである。