ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-282-JS2-1 蘇生ガイドライン2015 の概要―GRADEシステムの活用静岡県立総合病院野々木 宏心肺蘇生ガイドラインは2000 年に国際蘇生連絡委員会(ILCOR)と米国心臓協会(AHA)により世界共通のガイドラインが作成され、その後、国際的な科学的勧告(心肺蘇生と緊急心血管治療のための科学と治療の推奨にかかわる国際コンセンサス、CoSTR)として地域の独自性を考慮しつつ5 年ごとに改定されている。本邦ではCoSTR2010 に基づき日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドライン2010が作成された。本年10月16日CoSTR2015、AHA と欧州蘇生協議会(ERC)ガイドラインとともに2015年版が同時発表された。2015 年版で最も注目される変更点はガイドラインの作成でGRADE(Grading of Recommendations,Assessment, Development and Evaluation)システムを採用したことである。このシステムはシステマティクレビュー(SR)および診療ガイドライン(CPG)におけるエビデンスの質を評価しCPG に示される推奨の強さをグレーディングするための透明性の高いアプローチである。このようなエビデンス推奨の変更に加え、この5 年間で本邦からも多くのエビデンスが発信されて、CoSTR2015に適用されている。JRCの8つの作業部会(一次救命処置、二次救命処置、小児、新生児、急性冠症候群、 脳神経蘇生、普及教育のための方策、ファーストエイド)の主な勧告をあげる。心停止の予防に重点を置き、熱中症、入浴関連死など防ぎうる心停止についての情報を強化した。 呼吸をしているかどうかわからないなど、心停止かどうかの判断に自信が持てなくても、心停止でなかった場合を恐れずに、ただちに心肺蘇生と自動体外式除細動器(AED)の使用を開始することを強調した。 119 番通報により、救急車を呼ぶだけでなく、電話で心停止の判断についての助言や胸骨圧迫の指導を受けることの大切さを強調した。すべての市民が、心停止の疑われるあらゆる人に対して胸骨圧迫を行うこととしたうえで、訓練を受けておりその技術と意思がある場合は、人工呼吸も行うべきとした。 胸骨圧迫とAEDの使用法に内容をしぼった短時間の講習や、学校における心肺蘇生教育の強化により受講機会を増やし、市民による心肺蘇生のさらなる実施率向上を目指した。 医療機関で行われる体温管理療法や脳機能モニタリングなど、心拍再開後の集中治療ケアを強調した。急性心筋梗塞の発症から治療までの時間を短縮するために、市民が早く症状に気づいて119番通報を行い、消防機関、医療機関の連携を強化することの重要性を強調した。脳卒中患者の救命と後遺症軽減のため、市民啓発、救急医療体制の整備、血栓溶解療法の対象患者の拡大、最新の脳血管内治療を含めた超急性期治療の重要性を強調した。シンポジウム(合同企画) 2 2月13日(土) 9:00~10:50 第6会場蘇生ガイドラインはこう変わったJS2-2 蘇生ガイドライン2015―ACS概説静岡県立総合病院野々木 宏国際蘇生連絡委員会(ILCOR)からの国際的なコンセンサス(CoSTR)に基づき、2010 年に引き続き日本蘇生協議会によるガイドラインがAHA や欧州蘇生協議会と同時発表された。心停止の予防として院外心停止の最多の原因である急性心筋梗塞への対策が引き続き強調された。ILCOR では、急性冠症候群(ACS)が独立した章としてCoSTR 作成が実施された。18 のトピックが取り上げられ、プレホスピタルから来院1 時間以内の診療に関するCoSTRが報告された。発症から再灌流療法までを2 時間以内、最初に接触した医療従事者(主に救急隊)からカテーテル治療までを90 分以内と勧告され、従来の来院から治療までのD2B 時間90 分以内より更に短縮することが求められている。時間遅延の要因として、まず発症時の患者の迷いによる時間遅延があり、ファーストエイドの章では、市民へのACSを疑う警告症状の啓発が求められている。次に救急車に12誘導心電図を搭載し、その情報を事前に伝達すること、この搬入前の情報により受け入れ病院は、事前に急性心筋梗塞の診断が可能となり、あらかじめカテーテル検査室やスタッフの確保が可能となり、これらにより転帰が改善することが示された。低リスク評価と共に高感度トロポニンを来院時と2時間後に測定することでACSの除外が可能であることが示された。酸素投与については、正常酸素血症では酸素投与により、酸素投与しない群に比較し梗塞サイズが大きいことが示され、ルーチンの酸素投与が勧告されなくなった。広域地域での搬送時間による遅延がある場合には、特に発症から2 時間以内では非専門病院での血栓溶解療法の実施が勧告された。全国的にPCI 実施可能な体制が確保されている数少ない国であり、その有用性の国際発信が待たれる。心拍再開後ケアでは、ST 上昇あるいは非上昇を問わず急性心筋梗塞による心停止例では、体温管理と共に緊急PCIが勧告された。以上のCoSTRについてGRADEシステムによる評価と勧告について概説する。