ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-275-SY25-3 先天性心疾患の全身管理 LOSの治療- その考え方と実際静岡県立こども病院 循環器集中治療科大崎 真樹、齋藤 千徳、粒良 昌弘、三浦 慎也、中野 諭、濱本 奈央急性期循環管理の根本的な考え方は、酸素需要に見合った酸素供給をいかにして保つかということである。この「酸素需要と供給のバランス」という観点からLOS の治療を考えてみる。<酸素供給量>酸素供給量は心拍出量x 酸素含有量と表され、心拍出量は一回拍出量x心拍数で規定される。一回拍出量を規定するものは拡張末期容量と収縮末期容量である。一回拍出量を最大化するためには拡張末期容量を最大化し収縮末期容量を最小化すれば良いわけであるが、そのためには1)前負荷をかける(必要十分な輸液) 2)後負荷を下げる(血管拡張剤) 3)心収縮力の増加(強心剤)といったことが必要になる。至適心拍数は心室容量や狭窄・逆流の有無など血行動態により異なるため、解剖・残存病変を理解した上で、個々の患児に合わせて最適化する必要がある。特に開心術後には一時的に心室内伝導が変化することがあり、一時ペーシングによる心室再同期が有効な場合もある。シャント系の血行動態では肺体血流比を調整することにより、心拍出量は同じであっても体血流を増加させることができる。同様に体肺側副血行路が想定以上に発達している場合、同じ心拍出量であっても体血流が少なくなるためコイル塞栓術などでこれをコントロールすることも時に必要となる。酸素含有量も酸素供給量の重要な規定因子であり、2心室循環ではPaO2、SaO2とも高めの維持を心がける。単心室循環では体血流と酸素含有量の積が最大化する点を目指してコントロールする。Hb 濃度と予後の関係に関しては諸説あるが、少なくとも単心室循環の LOS ではHb 濃度は高めに保つべきであろう。<酸素需要量>酸素需要量は基礎代謝により大きく規定される。そのため体温コントロール、適切な鎮静が重要となる。必要であれば筋弛緩も追加し可能な限り酸素需要量を抑える。また人工呼吸は呼吸筋補助により酸素需要量を低下させるだけでなく、右心バイパス術後以外での循環補助作用もあるため非常に大切である。この酸素需要量と供給量の両者をコントロールしながらバランスを取っていく訳だが、最大限の内科的治療を行っても酸素需要に供給が追いつかない場合、機械的補助循環(ECMO/VAD)を考慮する。上記のようなLOS 治療の基本的な考え方を概説し、ベッドサイドでは実際にどう対応していくのかを症例を提示しながらお話ししたい。SY25-4 CHD 術後のAKI1)岡山大学病院 麻酔科蘇生科、2)川崎医科大学 麻酔・集中治療医学杉本 健太郎1)、戸田 雄一郎2)、清水 一好1)、末盛 智彦1)、金澤 伴幸1)、野々村 智子1)、川瀬 宏和1)、塩路 直弘1)、黒江 泰利1)、岩崎 達雄1)先天性心疾患(CHD)の術後に起こる問題点には術後出血・低心拍出量症候群・呼吸不全・急性腎傷害(AKI)などが挙げられるが中でも近年AKI は重要な話題となっている。AKI発生率・AKI 発生後の予後については報告によって様々であるが,CHD 術後患者の28-52%にAKIが発症するといわれている。一旦AKIが発生すると人工呼吸時間・ICU滞在時間が延長し、5-9倍死亡率が上昇するとの報告がある1)。AKI発生のリスクファクターとしては、年齢・術前の腎機能低下・チアノーゼ・手術の複雑さ・長い人工心肺時間・術中の低血圧・低心拍出量が挙げられる。小児AKI 診断基準としては、RIFLE・pRIFLE・AKIN・KDIGOの4つの診断基準が主だったものであり、完全には統一されていないのが現状である。すべて血清Cr値と尿量を用いた診断基準であるが、血清Cr値は腎機能が悪化してから遅れて上昇してくるため、血清Cr値よりも早期に患者の状態を表す指標が望ましい。CHD 術後AKI の早期診断のためのバイオマーカー研究は多数あり、有用性が報告されている。NGAL(neutrophil gelatinaseassociatedlipocalin)、L-FABP(liver fatty acid-binding protein)、シスタチンC、KIM-1(kidney injury molecule 1)、IL-18(interleukin18)などが代表的なバイオマーカーである。NGALについては、2005年のMishraらの報告では、人工心肺後2時間の尿中NGALは、術後3 日目までのAKI発生を感度100%・特異度98%で特定するという結果であった2)。L-FABPについては、2008年のPortillaらの報告では、人工心肺後4時間の尿中L-FABPは、術後3日目までのAKI発生を感度71%・特異度68%で特定するという結果であった3)。また、演者らは2015 年に尿中アルブミンの有用性を報告しており、術直後ICU入室時の尿中アルブミンは、術後3日目までのAKI発生を感度56%・特異度77%で特定するという結果であった4)。現在、小児AKIの予防については確立されたものはないが、バイオマーカーを用いてAKI を早期診断し、早期介入を行うことによりAKI を予防できるようになる可能性がある。1David M. Axelrod et al. Acute kidney injury in the pediatric cardiac patient. Pediatric Anesthesia(2014)24, 899-9012 JayaMishra et al. Neutrophil gelatinase-associated lipocalin(NGAL)as a biomarker for acute renal injury after cardiac surgery.Lancet(2005)365, 1231-383 D Portilla et al. Liver fatty acid-binding protein as a biomarker of acute kidney injury after cardiacsurgery. Kidney International(2008)73, 465-4724 Sugimoto K et al. Urinary Albumin Levels Predict Development of AcuteKidney Injury After Pediatric Cardiac Surgery: A Prospective Observational Study. J Cardiothorac Vasc Anesth(2015)May 22[Epub ahead of print]