ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
- ページ
- 276/910
このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている276ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている276ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-274-SY25-1 先天性心疾患の全身管理 呼吸・循環相互作用京都府立医科大学付属病院 集中治療部徳平 夏子【はじめに】呼吸と循環は密接に関連している。例えば呼吸仕事量増大による循環負荷や、左心機能低下による肺水腫は呼吸仕事量を増悪させる、などであるが、先天性心疾患症例において、この呼吸循環相互作用は顕著であり、呼吸は循環を規定する重要な要素である。【肺血管抵抗】先天性心疾患において、肺血管抵抗の管理が重要となる。肺血管抵抗は、高濃度酸素・一酸化窒素・アルカローシス・PDE 阻害薬・エンドセリン受容体拮抗薬・過膨張及び無気肺を避ける、などで低下するが、呼吸管理の基本的なパラメーターである吸入酸素濃度と血中二酸化炭素分圧は、肺血管抵抗に影響する因子の中でも重要とされ、肺血管抵抗を管理する上で呼吸管理が重要であることがわかる。シャントが存在する場合、肺体血流比は、シャントの大きさ、大血管の狭窄、肺血管抵抗、体血管抵抗によって決まる。このうち集中治療室で関与出来るのは血管抵抗である。例えば、肺血流増多型循環の場合、過剰な肺血流増加を回避する為には、肺血管抵抗を下げない管理が必要となる。また、Blalock Taussig shunt術後は、シャント血流量によって肺血管抵抗の管理は変わる。その他吸痰などで肺血管抵抗が変わり循環動態への影響をみる場合もある(刺激による肺血管収縮:肺高血圧発作pulmonary hypertensive crisis :PH crisis、または気道ドレナージによる肺血管抵抗低下、など)。フォンタン手術(total cavopulmonary connection TCPC)でも肺血管抵抗の管理は重要で、静脈血はポンプ作用無しに受動的に体心室へ流れるために、肺血管抵抗を低く保つことが重要である。陽圧換気離脱による肺血管抵抗の低下、及び陰圧呼吸による静脈還流増加はフォンタン循環において有効であり、このためフォンタン手術後では早期の陽圧換気離脱が重要となる。【まとめと補足】先天性心疾患の管理において呼吸循環相互作用は顕著で、安定した循環動態:シャント性疾患ではバランスのとれた肺体血流比を保つ為に、フォンタン循環では適切な前負荷を維持する為に、肺血管抵抗の安定した管理が重要である。このため人工呼吸管理のみならず、鎮痛・鎮静を含めた基本的全身管理が前提であることを補足とする。シンポジウム 25 2月14日(日) 9:00~10:50 第7会場先天性心疾患の全身管理SY25-2 先天性心疾患術後のLOS の評価について ScvO2、LacとともにCO2 gap は有効な指標となり得るか大阪府立母子保健総合医療センター 集中治療科赤松 貴彬、橘 一也、竹内 宗之先天性心疾患において、低心拍出症候群(Low Output Syndrome:LOS)をしばしば経験する。特に人工心肺離脱後、6~12時間以内に25~65%で起こるとされ、難治性のショックに陥る場合もあり、迅速な対処が必要である。原因としては人工心肺そのものに起因した全身の炎症、低体温の影響、心筋の一過性の虚血・再灌流や心筋の切開の影響などが考えられている。バイタルサイン、臨床症状から予測することは重要であるが、客観的な評価も必要である。心エコーは経時的な心機能評価に関しては最も有用な評価法であるが、酸素需要供給のバランスを示すものではなく、正確な評価には熟練が必要であり誰もが出来る訳ではない。その他にLOS を評価する指標として、混合静脈血酸素飽和度(SvO2・ScvO2)や血中乳酸値が用いられることがある。ScvO2 は酸素供給量(Oxigen delivery:DO2) を反映されるとされ、有用と考えられているが、酸素供給量と酸素消費量(Oxigenconsumption:VO2)の比を反映しているに過ぎない。ScvO2 の低下が心拍出量の低下であるというのはVO2 が一定であるという前提の解釈である。嫌気性代謝が亢進し、VO2 が低下し始めるような病態においてはDO2 や心拍出量を反映していない可能性がある。成人も含めた研究においては、ICU入室時にScvO2が高値を示した群(80%以上)の方が死亡率が高かったという報告もある。乳酸値に関しても嫌気性代謝の指標には、なり得るものの、カテコラミンの影響や、肝機能によっても左右され、この値のみでLOS を予測することは困難である。近年、動脈血と混合静脈血とのCO2分圧の差(CO2 gap)が注目されており、敗血症領域では報告が挙げられている。敗血症においては、高サイトカイン血症のため、酸素の抽出障害、すなわち十分なDO2 があっても組織へO2 を取り出すことが出来ない状態に陥るとされ、嫌気性代謝につながると考えられている。このような場合、DO2 が十分あったとしてもVO2が低下しているため、ScvO2は低下しにくいと予想される。CO2 gapは組織血流低下による組織低酸素によって上昇するとされ、嫌気性代謝下では特に有用である可能性がある。当院においても、心臓血管外科術後の小児においてScvO2とともにICU 入室時のCO2 gapを調査した。半年間72 症例の平均値は9.9mmHg と高値であった。正常値とされる6mmHg 以下の症例と7mmHg以上の症例で比較検討したが、ICU入室時の乳酸値は13.4mg/dl vs 17.9mg/dl(p=0.16)、ICU滞在日数は5.08 vs 7.18日(p=0.19)と有意とは言えないまでもCO2高値群の方が重症であると示唆された。これらの結果からもCO2 gapはLOS の補助的な指標としては有効な可能性があり更なる調査を進めている。このように先天性心疾患術後の管理においては、バイタルサインや、臨床症状に加え、ScvO2・乳酸値・CO2 gapを参考にしながら、心拍出量を推測し、迅速な対応をすることが必要である。