ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-273-SY24-3 急性広範型肺塞栓症に対する外科的アプローチ弘前大学大学院 医学研究科 胸部心臓血管外科福田 幾夫肺塞栓症(PE)は主に下肢で形成された血栓が、肺動脈を閉塞することにより起こり、その病態は肺動脈有効断面積の減少による急性右心負荷と、換気血流不均衡による低酸素血症である。塞栓が肺動脈主幹部や左右主肺動脈を急激に閉塞した広範型PE ではショックあるいは心肺停止に陥る。PEの治療としては、1)循環呼吸動態の安定化、2)血栓進展および血栓源からの再塞栓の防止、3)肺動脈再灌流療法に大別できる。1)では昇圧剤・酸素投与、人工呼吸、補助循環(PCPS)が重症度に従って行われる。2)は抗凝固療法と下大静脈フィルターによる移動血栓の補足である。3)は血栓溶解療法、カテーテル治療、外科的血栓除去術がある。急性PEの肺塞栓除去術の適応は、心肺停止や重症ショックでPCPSを導入したもの、広範型PEで血栓が大きく血行動態が不安定で血栓溶解療法の効果発現まで待てないもの、大手術や脳血管障害など血栓溶解療法禁忌例、血栓溶解療法無効例、右心系浮遊血栓などである。日本胸部外科学会の症例数調査では、わが国では1997 年~2013 年までの16 年間に1186 例の肺塞栓除去術が行われ、在院死亡は259例、通算手術死亡21.3% であった。とくに 2010年から2013年末までの4年間では352 例の手術で、在院死亡63 例、通算手術死亡17.9% と改善が見られている。PCPS導入例の救命率は73~81%と報告されている。心停止からPCPS導入まで30 分以上を必要とした症例の予後は不良である。肺塞栓除去術の手術死亡率は決して低くはないが、対象が自然予後で死亡率50%以上の致死的病態を対象としており、救命的治療としては大きな意義がある。Takahashi らはPCPS 導入16例を含む24例に対する肺塞栓除去術の救命率を87.5%、ハーバード大学からは、105例の広範型・亜広範型PE105例の手術救命率93.4%と報告している。我々は妊婦3例を含むPE26例で手術救命率96.2%であった。もっとも重篤な合併症は体外循環離脱困難で、いわゆるacute on chronic PE では血栓のみの摘除では肺高血圧が改善しない。また、PE発症後時間がたった症例で器質化が始まった血栓を肺動脈壁から無理に剥がそうとすると、肺動脈を損傷し、致命的な肺出血を起こすことがある。広範型PEは重篤な疾患であるが、集中治療と積極的な再灌流療法で救命可能であることを集中治療医、循環器内科医、麻酔医、心臓血管外科医は認識すべきである。