ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-255-SY18-3 ICT による抗菌薬Stewardship1)宝塚市立病院 感染対策室、2)宝塚市立病院 薬剤部、3)宝塚市立病院 中央検査室小林 敦子1)、春藤 和代1)、杉生 雅和2)、石津 智司2)、若松 雄太2)、吉岡 睦展2)、石村 さおり3)、折田 環3)ICU の重症感染症診療において、当院ではICT が重要な役割を担っている。重症患者ではMRSA などの多剤耐性菌感染症は致死的である。また、カテーテル関連菌血症Catheter-line associated blood stream infection(CLABSI)の治療や感染防止対策は複数のカテーテルが挿入されたICU では大きな課題となるだろう。当院ではICT が毎日ICU のミーティングに参加し、ICU の重症感染症診療に直接関わっている。薬剤部は広域抗菌薬の長期使用や抗MRSA薬使用を全例把握し、抗菌薬Stewardshipを実施することにより、抗菌薬の適正使用を推進している。これら多岐にわたる地道なICT活動の結果、MRSA感染やCLABSIは有意に減少した。また、2010 年より血液培養の提出件数が4 倍に増加したにも関わらず、真菌感染症は2010年以前には年に8-14件発生していたものが、2014年にはついに0件の発生状況となった。すべての広域抗菌薬に対するAntibiotic Use Density(AUD)は減少し、院内で検出される緑膿菌の各種抗菌薬に対する耐性率が低下した。1. 病院感染の実態調査当院では全病棟において様々なサーベイランスを実施している。MRSA罹患率サーベイランス(2011年1 月より開始)CLABSIサーベイランス(2012年1月より開始)アルコールジェル使用量サーベイランス(2012年4月より開始)サーベイランスを開始後MRSA感染、CLABSIは有意に低減し、アルコールジェル使用量は3 倍程度に増加した。サーベイランスによる監視効果と推測される。2.感染症教育・啓蒙活動ICT には月に約50例以上の相談があり、現在までに3200例を越える相談があった。ICT研修会は年に5回開催している。感染に関するメールを配信し、すべての職員に感染症の基礎を啓蒙している。これら数々の教育・啓蒙活動の成果として、起炎菌を同定するための血液培養の提出数と2 セット率が90%以上に増加した。3.抗菌薬適正使用の推進当院では5種の抗MRSA薬の使用の際、ICT に事前に相談するシステムを確立した。抗菌薬の血中トラフ測定が必要なグリコペプチド系(VCMとTEIC)とアルベカシン(ABK)では薬剤師が投与計画を立てている。トラフ測定が必要のない抗MRSA 薬(LZDとDAPの2 種)でもICD に事前に相談がある。抗MRSA薬の使用の際、事前相談率は2014年以降100%となった。ICTが抗MRSA薬の適正使用を推進することにより、抗MRSA薬の使用量全体が著しく減少した。また、感染制御専門薬剤師(BCICPS)が広域抗菌薬の2週間以上の症例を全例把握してICDに報告し、ICDがカルテをチェックし、治療方針について介入する。以上の様な抗菌薬適正使用の取り組みにより抗緑膿菌活性を持つ抗菌薬の使用は著明に減少し、この結果緑膿菌の耐性率も低下した。SY18-4 抗菌薬適正使用チームが耐性菌を減らす静岡県立こども病院 小児集中治療科伊藤 雄介、佐藤 光則、川崎 達也【背景】近年世界的に耐性菌が問題となっており既存の抗菌薬の適正使用が求められている。静岡県立こども病院では2006年よりinfection control team(ICT)が継続的な活動を行っているが、抗菌薬の適正使用に関しては一部抗菌薬の許可制と使用理由書の提出など、その活動は限定的であった。耐性菌の問題は院内も例外ではなく、例えば緑膿菌のカルバペネムに対する感受性は年々低下し、2007 年に87%であったものが2013年には70%台となり、実臨床での抗菌薬選択にも直結する喫緊の課題となっていた。これらの現状を打破すべく、2014 年よりICT から派生する形で少人数の抗菌薬適正使用チーム(Shizuoka Children’s HospitalAntimicrobial Team;通称SAT)を発足した。【チーム概要】医師3名(小児集中治療科PICU医師2名、総合診療科医師1名)、感染認定看護師、薬剤師、検査技師の6名で構成。コンサルテーション対応を主体として、その他マニュアルの整備や広域抗菌薬の使用例に対しての積極的介入等を行った。医師は日替わりで専用PHSを所持し常時のコンサルテーションに対応、週1回のラウンドと院内クラウドを活用し情報と介入戦略について共有している。【研究目的】SAT活動の根幹であるコンサルテーション件数と内容について検討し、あわせてSATの発足前後における抗菌薬の使用量、緑膿菌のカルバペネムに対する感受性を比較した。【結果】チーム発足前のコンサルテーション件数は年間30件程度であったものが年間315件と増加し、内訳は抗菌薬選択に関して48%、投与期間に関して5%であった。血液培養陽性者や長期広域抗菌薬投与者への逆介入も15%あった。2013 年度の院内全体のカルバペネムのDOT(のべ使用患者日数/総入院患者日数×1000)は26.5であったものが2014年度には18.6、2015年度は9.9に低下した。集中治療領域においてもPICUでは2013年度41.9、2014 年度27.4、2015 年度16.0と経時的に低下した。SATチームのメンバーが在籍していないCCUでは2013年度78.4、2014年度87.4と低下しなかったが2015年度は41.1と低下傾向となっている。院内全体の緑膿菌のカルバペネム感受性率は2014年末には93% に回復した。【考察】抗菌薬適正使用チームの発足により院内の抗菌薬の適正使用が進み、広域抗菌薬の総使用量を減少させることができた。過去の研究において、抗菌薬の適正使用プログラムと耐性菌減少との関係に関しては証明できているものは多くはないが、当院では今回感受性の回復を得ることができた。抗菌薬適正使用チームの発足のみが寄与しているわけではないが、院内における適正使用の文化づくりに大いに貢献していると考えている。集中治療領域は、抗菌薬の使用が多く、かつ耐性菌の有無が治療効果や予後に非常に左右される領域である。集中治療室に適正使用チームのメンバーが在籍している意義も含めて、抗菌薬適正使用チームの成果を報告したい。