ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-252-SY17-1 重症敗血症に対する広域抗菌薬使用の考え方医療法人鉄蕉会亀田総合病院 集中治療科林 淑朗重症敗血症に対するマネージメントの中でも輸液蘇生、感染源コントロールと並んで重要なのが早期(診断から1時間以内)の適切な抗菌薬投与である。そして、重症敗血症は死亡率も20?30%と高いため治療が失敗に陥る確率を減らすため治療初期には広域抗菌薬の使用が正当化される。しかし、抗菌薬選択において。ロジックなしにただ広域であれば良いというわけではなく、患者背景、臨床的に疑わしい感染臓器、地域や施設の疫学を考慮してターゲットとする微生物を具体的に想定して抗菌薬を選択しなければならない。また、昨今、カルバペネム耐性グラム陰性桿菌に代表されるように、薬剤耐性の問題が国際的に深刻化していることを背景に、特にカルバペネムの使用を最小限にする努力が求められる。初期の広域抗菌薬を開始したのちも、その後得られる検査結果や臨床経過をもとに、抗菌薬処方をより狭域化より適正化(deescalation)できないか日々評価を繰り返す必要がある。広域抗菌薬使用継続による多剤耐性菌定着の問題だけでなく、広域抗菌薬が必ずしも治療効果が高いわけではないからである。De-escalationは、科学的根拠は乏しいものの広く受け入れられているプラクティスである。また、重症敗血症では、必ずしも起因菌が特定されるわけでもなく、同定された起因菌が広域抗菌薬を必要とする場合も少なくないので、抗菌薬使用期間を短縮化することも重要課題となっている。プロカルシトニンに代表されるバイオマーカーを用いた抗菌薬中止判断が盛んに研究されているが一定した成果は挙げていないのが現状である。重症敗血症に対する広域抗菌薬の使用は正当化される一方で、可能な限り使用量を削減する介入が、実臨床と研究レベルで重要な課題となっている。シンポジウム 17 2月13日(土) 8:00~8:50 第8会場敗血症と広域抗菌薬SY17-2 経験的抗菌薬投与プロトコル導入による菌血症治療への影響1)国立病院機構京都医療センター 救命救急科、2)広島大学大学院医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門救急医学狩野 謙一1)、志馬 伸朗2)、小田 裕太1)、藤野 光洋1)、浜崎 幹久1)、岡田 信長1)、藤井 雅士1)、田中 博之1)、竹下 淳1)、別府 賢1)【背景と方法】救急集中治療領域における重症感染症診療において、初期経験的抗菌薬の選択は患者予後や抗菌薬適正使用に影響する重要な因子である。適切な選択を行うための一手法として、プロトコルの利用がある。救急外来及び救急ICUにおける感染症疑い時の経験的抗菌薬治療をプロトコル化し、その効果を検証した。菌血症患者を対象として、導入前後(2012 年10 月から2013 年5 月の100 例と2013 年6 月から2014 年1 月の100 例)での治療内容に及ぼす影響を、後方視的に比較検討した。【結果】前群で血液培養陽性率16.6%、汚染菌検出率0.6%に対し、後群は培養陽性率18.9%、汚染菌検出率0.7%であった。感染源は前群は呼吸器(22%)が最も多く次いで尿路感染(21%)、胆道系感染(15%)後群は尿路感染(23%)が最も多く次いで、胆道系感染(22%)、呼吸器(15%)が続いた。原因菌としてはEscherichia coli(24%)が最も多く,Klebsiella属(12%)、Staphylococcus aureus(6%)が続いた。経験的抗菌治療の選択は、前群でSBT/ABPC、後群でCTRXが多かった。カルバペネム系薬剤の使用率は前群で19%、後群で8% であった(χ 2=3.84 < 5.18、P=0.02)。経験的抗菌薬の適切性は前群87%、後群94% であった(χ 2=3.84 > 2.86、P=0.09)。入院死亡率は前群22%に対し後群26% であった(χ 2=3.84 > 0.44、P=0.51)。【結語】施設内における経験的抗菌薬プロトコル導入により、適切性は上昇傾向にあったが、死亡率は不変であった。カルバペネム系薬剤の使用量は減少し、抗菌薬の適正使用につながる可能性が示唆された。