ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-223-SY5-1 日本版敗血症診療ガイドライン2016 ~定義と診断のストラテジー~名古屋大学大学院 医学系研究科 救急・集中治療医学分野松田 直之【はじめに】日本版敗血症診療ガイドラインは,日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会により初版として2012年に作成された。この目的は,集中治療従事者だけではなく,集中治療に特化しない医療従事者も対象とし,広く,本邦独自の視点で,さらに本邦の敗血症診療データ解析を基盤として,重症敗血症および敗血症性ショックの診療基盤を本邦に構築することにあった。このようなガイドラインにより,敗血症の治療方針の足並みは揃えられる傾向がある。一方,敗血症の予後改善に向けて早期発見と早期治療の重要性,敗血症の重篤化阻止と治療成績向上に関与する因子についてなどに対してエビデンスを確定していかねばならない。日本版敗血症診療ガイドラインは,診療エビデンスを基盤として,2016 年に改定が予定されている。【内容】1.敗血症の定義改革の是非,2.敗血症早期治療と予後改善のエビデンス,3.敗血症のバイタルサインエビデンス,4.敗血症における血清マーカーのエビデンス。【結語】敗血症には,画期的診療エビデンスがない。これは,定義と診断においても同様である。定義をより明確なものとすることで早期発見に繋げ,確定診断を早期治療に結びつける工夫がなされている。これに加えて当講座では,臨床研究を成立させるための観察研究,臨床研究,そして,より良い成績を提供するための病態学的基盤研究や創薬基盤研究を指導している。シンポジウム 5 2月12日(金) 14:40~15:30 第5会場敗血症治療にバイオマーカーは有効SY5-2 重症敗血症患者のサイトカイン産生能は転帰と関連する日本大学 救急医学系 救急集中治療医学分野桑名 司、伊原 慎吾、河野 大輔、杉田 篤紀、山口 順子、木下 浩作【目的】重症敗血症患者における血中有核細胞のサイトカイン産生能が予後、重症度と関連するかどうかを明らかにする。【方法】当院ICU入室した重症敗血症症例を対象とした。重症敗血症診断時、6時間後、24時間後のサイトカイン産生能を測定、APACHEII スコアを算出した。重症敗血症診断後28 日目の転帰を調べた。サイトカイン産生能と転帰の関連があるか、サイトカイン産生能とAPACHEIIスコアについて相関があるか検討した。全血を各々2 つに分け、LPS(10 ng/ml)添加群と非添加群とし、5時間37℃で静置後、全血上清中のIL-6,8,10 濃度を測定し、LPS添加群と非添加群のIL 濃度の比(LPS添加群/ 非添加群)を用い、サイトカイン産生能と定義した。【結果】重症敗血症は30例、うちICU 生存群20例、死亡群10例であった。ロジスティック回帰分析を行った所、サイトカイン産生能のうちIL-6産生能の低下は転帰不良の独立した因子であった。重症敗血症患者のサイトカイン産生能はAPACHEII スコアと中程度の相関を示した。【考察】敗血症では、ステロイド等の多様な物質でサイトカイン産生が抑制され、重症敗血症では単球機能の低下により免疫抑制が起こる。本研究では、これらの多様な物質や単球機能の低下などによると考えられるIL-6産生能の低下と、転帰不良との関連が認められた。また、重症疾患の転帰を予測するAPACHEIIスコアが免疫抑制を現すスコアとなる可能性があることが示唆された。現在、敗血症による免疫抑制を早期に認知し治療することで敗血症の予後を改善できる可能性が考えられており、APACHEIIスコアが高く免疫抑制が起こっている可能性のある症例に関して免疫賦活などの早期治療が予後改善につながる可能性がある。【結語】転帰不良の重症敗血症患者では、IL-6 産生能が有意に低下しており、APACHEII スコアとサイトカイン産生能には相関が認められた。