ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-220-SY4-1 早期離床/ 運動を阻害する因子:総論横浜労災病院 中央集中治療部藤本 潤一近年の急性期医療の進歩により、多くの重症患者がICUで治療され救命されるようになってきた。その一方で、これらの患者が治療に伴う長期安静臥床などによりせん妄、筋力低下等をきたし、その後長期にわたって認知機能や身体機能が低下することが注目されている。早期離床/運動(early mobilization、以下EM)を目指したICUでの早期リハビリテーションは、重症患者においてせん妄の予防、ICU-acquired weakness(ICU-AW)や廃用症候群の予防、ADL の早期回復により、長期的予後を改善させるために重要である。重症患者でのEM は”日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不 穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン” でも推奨されている。しかし、重症患者でEM を行うにあたっては、患者の状態、治療内容、医療システム、医療者による様々な阻害因子が存在する。患者、治療要因でのEMの阻害因子には、循環動態不安定(異常血圧、心筋虚血、不整脈、血管作動薬の使用)、呼吸状態不安定(人工呼吸療法中、高度の低酸素血症、高FIO2、頻呼吸、人工呼吸器との同調不良)、神経学的問題(脳圧上昇、意識レベル低下、せん妄、興奮、混乱、過剰鎮静、疼痛、てんかん重積状態、筋力低下)、活動性消化管出血、不安定な骨折、大きな開放創、特殊治療(血液透析、腹臥位療法、HFOV、ECMO、IABP)、留置デバイス(肺動脈カテーテル、鼠径部のカテーテル、気管チューブ)等がある。これらの多くは対策不可能だが、疼痛、過剰鎮静、留置デバイスに対しては、鎮痛薬、鎮静薬投与の工夫、不必要な留置デバイスの早期抜去等で調整することでEM施行を促進することができる。一方で人工呼吸、血管作動薬の使用、気管チューブ、鼠径部のカテーテル留置等は阻害因子とならないとの報告があり、また血圧等各因子の安全範囲はEM による患者の利益とリスクとの兼ね合いで決定され、EM の対象患者や開始中止基準ついての明確な指針はない。各施設でのスタッフの数、経験、患者背景等の実情に合わせて、EM実施プロトコールを作成することが望まれる。一方、医療スタッフ、施設要因でのEMの阻害因子には、スタッフの知識およびトレーニング不足、人手(看護師、作業療法士)不足、医師による理学療法オーダーの欠落、スタッフの身体損傷、過剰な労務負担等がある。これらに対しての対策には、EMに関する教育と施設内での合意形成、スタッフ人数の充足、ICU でのEMを押し進める” 早期リハビリチーム” の設置、EM をプロトコール化し医師の処方なく自動的にEM オーダーがされる仕組みの構築、等がある。EM を阻害する因子を理解し、その対策を講じることが、EMの安全で効果的な実施に必要である。シンポジウム 4 2月12日(金) 14:40~16:40 第4会場早期離床/運動を阻害する因子とどう向き合うか?SY4-2 重症敗血症などで多臓器の機能低下を呈しているときの臨床判断亀田総合病院 リハビリテーション室鵜澤 吉宏集中治療室において早期リハビリの効果が報告されており、積極的離床や運動療法が行われるようになっている。このような中、集中治療室に入室した患者に対するリハビリテーションを実施するに際し安全を考慮した実施の推奨が報告されてきている。集中治療室に入室する患者は、感染症や循環不全、呼吸不全、腎機能傷害、血栓塞栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)などの病態を呈し、重症敗血症の患者は臓器障害と臓器還流障害もしくは低血圧を伴う。また、人工呼吸器や動脈ライン、血液浄化装置などのデバイスが使用されていることもあり、集中治療室で管理されている患者の中には、提示された推奨では判定できない状態の患者がおり、重症であるが故にリハビリテーションの実施が制限されてしまうことがある。このような状況の中、重症な状態や複数の病態が絡んでいる患者に対するリハビリテーションの安全性や妥当性は明らかになっていない点もある中で、医師からの相談を受け、リハビリテーションの適応を考えなければならない場面に遭遇することがある。その際の臨床の現場における判断はどのように行われるべきかは多くのセラピストにとって懸念を呈するところである。ここでは重症敗血症の例を提示しながら、複数のデバイスを要し病態の変化を示しながらどのように対応し、リハビリテーションを行う上でどのような点に配慮し、どのような内容で実施すべきかを検討する。