ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ページ
220/910

このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている220ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-218-SY3-1 新たな可能性を開いていく~NAVA~福田病院 小児科高橋 大二郎呼吸不全と向き合うとき、不快を感じることなく呼吸したい。もっと楽に、穏やかに、自分の呼吸がしたい。そう願っているのではないだろうか。私たち医療従事者も、患者自身の呼吸を最大限に尊重できれば、と思っている。Patient Triggered Ventilationとして広く使用されているモードとしてSynchronized Intermittent Mandatory Ventilation(SIMV)、Assist Control Ventilation(ACV)とPressure Support Ventilation(PSV)がある。これらのモードでは、呼吸器回路内の流量や圧力の変化によって吸気開始を感知するが、ミストリガーやオートトリガーといった非同期がどうしても問題となる。さらに補助圧(換気量)に関しても人工呼吸器設定に依存するため、患者自身が必要な呼吸補助量を過不足なく設定するためにはきめ細かな配慮が必要である。ナチュラルなバランス呼吸をサポートする新しい方法として、NAVA synchronized and proportional to neural effort というコンセプトが存在する。生体情報によって呼吸トリガーと補助圧、吸気時間および換気回数を決定する人工呼吸で、NAVA(NeurallyAdjusted Ventiratory Assist)とPAV(Proportional Assist Ventilation)がこの概念に基づいたモードである。NAVA は横隔膜の収縮に伴い出現する横隔膜電気的活動(Edi:Electrical activity of diaphragm)を利用し、呼吸補助のタイミングと補助圧を決定する人工呼吸器モードで、フロートリガーや圧トリガーを基本とする一般的な人工呼吸器よりも優れた同期性を与えてくれる。呼吸回数についても本人の呼吸数が用いられるために設定する必要がない。EdiにNAVAレベルという比例定数を乗じた値が補助圧である。これらのことを別の視点からみてみると、NAVAでの人工呼吸器の位置づけは身体の外にあるというよりも、本人がもう一つ呼吸筋を手にしたように傍に寄り添い、“自らの呼吸筋” と“ 呼吸筋としてサポートしてくれるNAVA”で呼吸努力をシェアする、という印象である。NAVAレベルを上げることは呼吸筋の休息をもたらし、逆にNAVA レベルの漸減は呼吸筋の賦活を意味し、ありのままの呼吸を思い出させてくれる。またEdiは、努力呼吸の程度を示すモニタリングツールとしても効果を発揮する。さらにNIV-NAVA(Non Invasive Ventilation-NAVA)では、NIVの効果とされる気道の開通性とCPAP による機能的残気量の保持に加えて、非挿管下でもNAVAの最大の特徴である「優れた同期性」によって、求めるタイミングに合わせて呼吸をサポートすることが出来る。「適切な補助圧(換気量)」と「同期性」によって、自然な呼吸を最大限に生かすNAVA。NAVA は呼吸の原点に戻り、再びバランスを取り戻すことをサポートする新しい扉である。自らの呼吸を大切にサポートする事で、また一つ進化した呼吸管理を目指していきたい。シンポジウム 3 2月12日(金) 15:40~17:10 第3会場新しい換気モードの可能性を探るSY3-2 Adaptive Support Ventilation ASV and Intellivent-ASV大阪大学医学部附属病院 集中治療部内山 昭則Hamilton G5に搭載されているASVは肺メカニクスの変化や自発呼吸の有無などに応じて換気設定を自動的に変更するClosedloop ventilationの一つである。多くの人工呼吸では一回の換気条件と換気回数を設定するが、ASVでは分時換気量Minuteventilation(MV)を目標に換気量を設定する。身長と性別から求めた理想体重IBW を基準として成人で100 ml/kgIBW、小児で200 ml/kgIDWを100%とした場合の%分時換気量(%MV)として目標の換気量を設定する。患者の状態やPaCO2データをみて%MVを調節する。調節呼吸時の一回換気量と換気回数の関係はOtisの式に基づいて理論的に呼吸仕事量が最少になる換気回数を人工呼吸器が決定する。換気開始時に3 回のテスト換気を行い、肺メカニクスデータから吸気圧と強制換気回数が自動決定される。自発呼吸努力が出現すると目標の換気量を維持しながら調節換気から補助換気への変更が自動的に行われ、自発呼吸努力が十分であるならばCPAP+PSVモードのような補助換気となり、自動的なウィーニングも可能である。術後患者での人工呼吸のウィーニングの労力の軽減と時間短縮が可能であったという報告もある。ASVモードは近年、呼気終末炭酸ガス分圧EtCO2と経皮的酸素飽和度SpO2を連続的に測定することによって%MV、PEEPとFiO2 を自動調節するIntellivent-ASV モードに発展した。ARDS、中枢神経障害や慢性高炭酸ガス血症では換気条件のコントロールポリシーを変更できる。心臓外科術後患者の人工呼吸においてIntellivent-ASV が労力の軽減とより理想的な換気の達成に有効であったとの報告がある。また、Intellivent-ASV モードにはQuick Wean function という自動的にウィーニングを行い、いわゆる自発呼吸テストSpontaneous Breathing Trial SBTを自動的に開始し、SBTの評価し、失敗した場合にも自動的に補助換気量を増加させる機能が搭載されている。自発呼吸努力が出現しSBT 開始基準をみたせば、G5は自動的に%MVを25% まで低下させてCPAP +低圧設定のPSV モードとしてSBT を行い、SBT 基準を満たすかどうかを判定し人工呼吸器からの離脱が可能かどうかを判別してくれる。我々の施設では食道癌手術の術後管理にIntellivent-ASVモードとQuick Wean functionを使用している。従来の人工呼吸管理と比較して省力化とウィーニング時間の短縮がはかることができた。Intellivent-ASV モードはClosed loop ventilation モードとしては最も進歩しており、特にICU での省力化の点で有望である。しかし、問題点がないわけではない。ASV モードで用いられるOtisの式は本当に妥当であるのか、人工呼吸器と自発呼吸努力の不同調の点で問題がないのか?また、通常の肺酸素化能評価にはPaO2が用いられるがSpO2を用いることに問題はないのか、特にPEEPの自動設定可能であるが、PEEPには循環系への影響も加味する必要性はないのかといった疑問点が残る。