ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-212-EDS7-3 重症くも膜下出血の集中治療-新たな循環管理の提唱東京女子医科大学東医療センター 救急医療科 救命救急センター磯谷 栄二くも膜下出血後の循環管理としては、triple H療法が有名であるが、現在に至るまでこの治療法の検証は行われていない。多施設共同前向きコホート研究であるSAH PiCCO study は、2009 年10月に始まり2012 年4月に終了し、現在その成果が英文雑誌上で紹介されている。SAH PiCCO studyによって明らかとなったくも膜下出血後の循環動態に基づく新たなGoal Directed Therapyが提唱されている。SAH PiCCO studyでは、破裂脳動脈瘤の止血術後に、PiCCO plusモニタリング下に循環動態管理を行った。患者基本情報以外に、PiCCO plus モニタリングで得られる指標について検討を行った。これらのデータは、SAH PiCCO データバンクに登録された。本多施設共同研究には、9 施設から計204例の登録が行われた。59%の患者にはtriple H 療法が施行され、35%の患者に遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia; DCI)が発症した。Triple H療法施行群、非施行群間で、DCIの発症率に有意差はなかった(TagamiT. et al. Neurocrit Care 2014)。DCI 発症の危険因子を検索したところ、低心臓拡張末期容量(Global End-diastolic Volume Index;GEDI)、高末梢血管抵抗係数(Systemic Vascular Resistance Index; SVRI)、低心拍出量係数(Cardiac Index; CI)であった(YonedaH. et al. Stroke 2013)。GEDIを822ml/m2以上に保つことで、DCIの発症率は有意に減少し、GEDIを921ml/m2以下に保つことで、肺水腫の発症率は有意に減少した(Tagami T. et al. Crit Care Med 2014)。以上の結果から、我々はtriple H療法に代わる新たなgoal directed therapy として、くも膜下出血後にはGEDI を822ml/m2 以上921ml/m2 以下に保つことで、DCIの発症を抑制するとともに、肺水腫の合併を低下させることができると提唱する。本研究によるgoal directed therapyは、定量性に優れる半面、侵襲度が高く汎用性が期待できない。そこで現在GEDI と相関が高く、低侵襲で汎用性も期待できるparameterを模索中であり、進行中の臨床研究の結果も交えて新たな循環管理法を提唱する。EDS7-4 脳卒中患者の集中治療北海道大学大学院 医学研究科 侵襲制御医学講座救急医学分野澤村 淳クモ膜下出血以外の脳卒中についての神経集中治療の解説をする。脳卒中治療ガイドライン2015(2015年版)を中心に解説をし、一部アドバンス治療について追加説明する。その上で、脳卒中における神経集中治療のエッセンスを紹介する。1.第一に脳梗塞について解説する。(1)rt-PA静注療法遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA, アルテプラーゼ)静注療法の治療可能時間の延長(3時間以内から4.5時間以内へ)が2012年8月に保険適応された。脳卒中治療ガイドライン2015でもグレードAとして推奨された。(2)急性期抗血小板療法オザグレルナトリウムの点滴投与(グレードB)、アスピリンの経口投与(グレードA)のみが推奨されていたが、2015年版では抗血小板薬2 剤併用(アスピリンとクロピドグレルなど)が、軽症脳梗塞、またはTIA治療法として、新たな推奨に追加(グレードB)された。(3)経皮経管的脳血栓回収療法2011年に国内承認されたMerciリトリーバ、Penumbra システムによる急性期局所再開通療法の推奨レベルは、2015年版ではグレードC1のままである。2015 年アメリカ心臓協会/アメリカ脳卒中協会から新しい脳卒中治療ガイドラインが発表された。内容は適応患者に対し現行の標準治療であるIV-tPAに、ステント型血栓回収デバイス(商品名:Solitaire)を初めとするステント型血栓除去術の併用が治療の第一選択として推奨している。(4)脳浮腫管理~脳保護療法高張グリセロール、マンニトールは急性期に使用することを考慮してもよい(グレードC1)。エダラボンは脳保護効果が期待され、脳梗塞(血栓症・塞栓症)急性期の治療法として勧められる(グレードB)。2.第二に脳内出血について解説する。(1)急性期における血圧管理の重要性 脳出血急性期に収縮期血圧を140mmHg 未満に低下させた群で180mmHg未満の群と比較して機能転機が療法であることが報告された。2011 年6 月にはニカルジピンの使用禁忌が撤廃され、脳出血急性期に用いる降圧薬としてカルシウム拮抗薬の微量点滴静注が推奨された。(2)Microbleeds症例T2* 画像でMicrobleedsが検出された症例ではより厳密な血圧コントロールが重要である。一定の条件を満たしたMicrobleeds症例群で外科的治療の効果を認めている。(3)新しいdevice や薬剤 神経内視鏡を用いた外科的治療は低侵襲治療として一定の役割を担う。 抗血栓療法中に合併した脳出血に関しては、非ビタミンK 阻害経口抗凝固薬(Non-vitamin K antagonist oral anticoagulant:NOAC)はワルファリンと比較して頭蓋内出血の発症率が有意に低いことが報告されている。(4)妊娠分娩に伴う脳卒中本邦では出血性脳卒中が上記の7 割以上を占め、その原因疾患では脳動静脈奇形が最多であることが報告されている。