ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-210-EDS6 臨床工学技士が知っておくべき敗血症性ARDSの呼吸管理横浜市立市民病院 臨床工学部相嶋 一登 敗血症は「感染によって発症した全身性炎症反応症候群と定義1)されている。さらに敗血症の重症度分類として、重症敗血症(sever sepsis)と敗血症性ショック(septic shock)に分けられている。重症敗血症は臓器障害や臓器灌流低下または低血圧を呈する状態であり、臓器灌流低下または灌流異常には、乳酸アシドーシス、乏尿、意識混濁などが含まれる。また敗血症性ショックは重症敗血症のなかで、十分な輸液負荷を行っても低血圧が持続するものと定義されている。また、ARDS の発症トリガーを検討した研究から、敗血症を発症すると高率(30%前後)にARDS を合併することが明らになっている。つまり、敗血症患者に対する人工呼吸管理を行う際はARDS を念頭においた管理が必要となる。ARDS は未だに病院死亡率が40~50%程度となっていおり、依然として致死率の高い症候群である。また、生存退院を果たした患者でも長期的な身体、精神機能の低下が認められている2)。 ARDSに対する人工呼吸管理では、「肺保護換気」の実践が必要である。何から肺保護を行う必要があるのかというと、それは人工呼吸である。1970 年代からARDS患者に対して高い気道内圧で人工呼吸管理を行うと、びまん性肺胞障害などが発生することが知られてきた。近年では気道内圧が高くなくても、肺胞障害が発生することが分かってきている。この人工呼吸に関連した肺傷害はVentilator Induced Lung Injury; VILI と言われている。VILI は肺胞の虚脱と過伸展を繰り返すことにより発生する。肺胞虚脱を防止するために適切なPEEPを付加し、肺胞過伸展を防止するために1回換気量の制限(低容量換気)を行うことが肺保護換気戦略の中心である。以下に肺保護換気戦略の概要を述べる。 ■適切なPEEPによる肺胞虚脱の防止 ○PF ratio ≦200mmHg のARDS ではPEEP15cmH2O程度を付加 ■低容量換気 ○1 回換気量は6mL/kg(体重換算は予測体重)程度 ○低容量換気に伴う低換気(PaCO2 の上昇)はpH7.25 までは容認 重症敗血症の患者では、組織酸素代謝に障害が生じており、血清乳酸値の上昇や急性腎傷害による代謝性アシドーシスを合併することが多い。この状態で低容量換気に伴う呼吸性アシドーシスが存在すると、酸血症がさらに悪化することがある。さらに、敗血症性ショックは末梢血管抵抗が低下することによる血流分布異常型ショックに分類され、左室前負荷が低下している。この状況で高いPEEP を使用すると循環が破綻する可能性がある。敗血症性ARDS に対する呼吸管理ではこれらのRisk Benefitを勘案することが大切である。1)日本集中治療医学会Sepsis Resistry 委員会: 日本版敗血症ガイドライン The Japanese Guidelines for the Management of Sepsis, 日集中医誌, 20, 124-1732)永田功、武居哲洋:ARDS の疫学,Intensivist, Vol7 No1, 2015, 9-17教育セミナー 6 2月13日(土) 10:20~10:50 第10会場基礎セミナー3