ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-202-EL29大阪大学 医学部 感染制御部朝野 和典20世紀も後半の20 年間に院内感染対策の概念が次第に広がり、21世紀になって、組織的な対策が各施設で行われるようになった。MRSAやMDRP(多剤耐性緑膿菌)の院内感染を経験した施設は、感染対策に力を入れ、サーベイランスを行って、少しずつその成果が上がってきている。ところが、21世紀も10年を過ぎたころ、大きく姿を変えた薬剤耐性菌が、院内感染として広がるようになってきた。WHO は、抗菌薬の開発が滞り、一方で、今あるほとんどすべての抗菌薬に耐性の細菌が出現しつつあることを“Post-antibiotic Era” と呼び、ありふれた感染症で人が死んで行く時代(Pre-antibiotic Era)に逆戻りすると、強い警告を発している。21世紀の薬剤耐性菌の変貌とは、これまでの弱毒菌による日和見感染症ではなく、immunocompetent な宿主にも病気を起こせる細菌が耐性化したこと。そして、最も重要なことは、菌株、菌種を越えて耐性機構が伝播することである。この代表的な薬剤耐性菌がカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)である。そして、今日、CREなどの超多剤耐性グラム陰性菌に対する最後の砦として有効なコリスチンに対しても耐性のプラスミド(MCR-1)が腸内細菌科細菌の間で伝播される、最強の耐性菌まで生まれる可能性が現実のものとなっている。一方で、日本に少ない超多剤耐性菌が輸入感染症として日本にもたらされることにも注意が必要である。多剤耐性Acinetobacter baumannii(MDRA)は、世界中の国々で、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の原因菌として、ICUにおいて爆発的に広がっている。日本にMDRAが少ないのは、単に幸運な偶然にすぎず、日本にも高頻度でMDRA が入ってきた場合、気づくのが少しでも遅れれば、諸外国と同様MDRAはVAP の3大原因菌のひとつとなるに違いない。このような耐性菌による院内感染症に対して、予防することは極めて困難な状況となってきている。しかし、基本は、サーベイランスの繰り返しであり、少しでも早く存在をとらえ、隔離予防策をとることである。もうひとつは、ICU に限らず、一般病棟、もっと言えば病院に限らず、高齢者施設などのケアを行う現場では、標準予防策を徹底的に厳守することが重要である。しかし、そのためには、費用がかかる。その費用をどこから捻出するか、という問題も解決しなければならない。感染対策は大きな岐路に立たされている。20 世紀型の感染対策の通用しない、21 世紀型の感染が広がろうとしている。予防するには、個人個人の注意だけではなく、社会全体で解決すべき事柄がたくさんある。教育講演 29 2月13日(土) 10:00~10:50 第8会場院内感染をいかに予防するか~21世紀の挑戦~EL30国立循環器病研究センター 看護部高田 弥寿子近年、終末期医療や緩和ケアを内包する新しい概念として「エンド・オブ・ライフケア」という概念が提唱された。エンド・オブ・ライフケアは、「診断名、健康状態、年齢にかかわらず、差し迫った死、あるいはいつか来る死について考える人が、生が終わる時まで最善の死を生きることができるように支援することである。質の高いエンド・オブ・ライフケアの構成要素は、患者が適切な疼痛および症状マネージメントを受けること、不適切な延命を避けること、自律の尊重(コントロール感覚の到達)、家族の身体的・心理的な重荷を軽くすること、愛する人との関係性を深めることの5つの要素があり、患者・家族にとってよりよい死を迎えるということは、最期の時期をどうするかという点が重要ではなく、最期を迎えるまでの身体的安楽さとともに、大切な人との関係を確認しあい、絆を深め、どのように生と向き合えるか、一つ一つのつらさや不安をどのように受け止めて、大切な人と共有し乗り越えていくか、そのプロセスの重要性が指摘されている。以上のことから、患者・家族にとって質の高いエンド・オブ・ライフケアの実現のためのケアの構成要素は、苦痛緩和、意思決定支援、グリーフケアの3 本柱に包含される緩和ケア、サポーティブケアであり、病気の経過に応じて継続的で包括的なケアが展開されることが望ましい。急性期にある患者は、急性疾患、災害、事故などにより急激に生命の危機的状態に陥り、患者・家族は心身が不安定な状態に陥る。治療が奏功することで症状が劇的に回復し回復過程をたどる患者も多いが、一方で、治療に奏功せず終末期へ移行するケースや集中治療が長期化することにより全人的苦痛をきたすケースもあり、急性期から経過の適切な判断と全人的苦痛の観点から適切な症状評価を行い、多職種協働チームによるタイムリーな緩和ケア介入を行うことが望ましい。また、急性期の特徴として、患者の意思決定能力は著しく低下しているため、家族が代理意思決定を余儀なくされる場合が多い。患者の意思が不明確なまま短期間でいのちの選択を迫られることが多いため、家族は意思決定上の葛藤を生じ、その意思決定のありようが死別後の家族のグリーフに大きく影響する。そのため、看護師は患者の権利擁護者、そして、家族の代理意思決定を支援する立場として、患者の思いや意向を尊重できるように揺れ動く気持ちを敏感に感じ取るとともに、患者、家族にとっての最善の選択ができるように医療チームの中で調整役として機能することが大切となってくる。そこで、本セッションでは、急性期の特徴、医療の動向をふまえて、クリティカルケアにおける緩和ケアについて、緩和ケアチームに所属する急性・重症患者看護専門看護師の立場から考察したいと思う。教育講演 30 2月13日(土) 16:40~17:30 第9会場急性期における緩和ケア