ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-201-EL27岡山大学病院 集中治療部鈴木 聡【酸素は多ければよい?】酸素療法は、病院内全体において幅広く行われる治療であり、特に集中治療領域においては、酸素療法は低酸素の予防・治療法として、ほとんど全ての患者に対して行われている治療である。一方で、必要以上の酸素投与・高酸素血症は、活性酸素や酸化ストレスによる酸素毒性を引き起こすことが以前から報告されている。また、吸収性無気肺、冠動脈血流低下、脳血流低下、心拍出量低下といった重要臓器への有害事象リスクも懸念されている。実際に、心肺停止後、脳梗塞、慢性閉塞性肺疾患、心筋梗塞、外傷性脳損傷などの特定の患者群において、高酸素血症や酸素投与と患者予後の増悪の関連が報告されている。【集中治療領域における酸素療法の現状】以上のことから、酸素療法の目標は、高濃度酸素による酸化ストレス・酸素毒性を最小限に抑えつつ、組織に適切な酸素を供給する事である。しかし、複数の観察研究によると、集中治療領域における酸素療法の現状は、SpO2 が高値であっても投与酸素が減量されることなく放置されているケースが多いことが分かった。つまり、現在の集中治療患者に対する酸素療法は最適化されておらず、高酸素血症がある程度容認されていると言える。【適切な酸素療法とは?】成人重症患者に対する酸素療法の目標値としては、British Thoracic Society によるガイドラインが、SpO2 94-98%をターゲットにすることを推奨している。しかしこの値はエキスパートオピニオンに基づくものであり、エビデンスは存在しない。つまり、集中治療患者における最適なSpO2 値は未だに検証されていないのが現実である。このような背景を基に、厳密にSpO2値を管理する酸素療法の導入の気運が高まってきている。昨年報告された多施設RCT(CLOSEI study, Am J Respir Crit Care Med. 2015)では、目標SpO2 値を90-92%とする酸素制限療法が安全に実施可能であることを報告している。本講演では、(1)高酸素血症による各臓器での生理学的変化、(2)重症患者における酸素療法の現状、(3)重症患者における高酸素血症と患者予後との関連に関して整理を行い、酸素化の目標値を探る。教育講演 27 2月13日(土) 16:40~17:30 第4会場酸素化の目標値はいくらにすべきかEL28自治医科大学 麻酔科学・集中治療医学講座 集中治療医学部門布宮 伸重症患者の痛み・不穏・せん妄管理に関する機運が高まっている.2013年初頭に公表された米国集中治療医学会の「成人ICU患者に対する疼痛・不穏・せん妄管理ガイドライン」が,その原文タイトルから「PAD」ガイドラインという語呂の良い略称で広まっていることも,一因であろう.PAD管理の要点は,重症患者にしばしば発生する種々の精神障害の多くが精神医学的には「せん妄」であり,せん妄発症が患者予後を悪化させる独立危険因子である,という点に尽きる.すなわち,せん妄は,重症患者に発生する重要臓器障害の中枢神経系における発現形の1 つであり,重症患者管理を成功に導くためには,「適切な痛み対策に基づいた必要最小限の鎮静管理」を前提とし,非薬理学的介入も含めたさまざまなせん妄対策が必須である,という考え方である.「心臓大血管術後」や「心不全」は重症患者のせん妄発症に関連する因子としてしばしば指摘されるキーワードであるが,特に内科系心不全患者のPAD管理に関する報告は驚くほど少ない.多くのガイドラインで推奨されている非ベンゾジアゼピン系鎮静薬(プロポフォール,デクスメデトミジン)が持つ循環抑制作用は循環不全を主徴とする患者には好まれにくい上に,せん妄に対する治療薬としてのハロペリドールの持つ催不整脈作用などは,この領域におけるエビデンスの確立の妨げとなっており,現実には各症例ごとにテーラーメードの試行錯誤を繰り返しているのが実情かもしれない.日本集中治療医学会では,米国版PADガイドラインの流れを受けて,日本の実情に合わせた日本版のガイドライン(JapanesePAD guideline:J-PAD)を作成し,2014 年9 月に公表した.本講演ではJ-PAD を概説した上で,cardiac emergency としてpostcardiacsurgeryおよびpost AMI を例にJ-PAD の考え方の適用法を解説したい.本講演を契機として,循環器領域においてもJ-PADが適切に活用されることで,今後のわが国のICU/CCU領域の臨床現場で,患者アウトカムの改善に寄与することができれば幸いである.教育講演 28 2月13日(土) 16:40~17:30 第5会場循環不全患者のせん妄予防