略 歴
東京工科大学を卒業後、がん・感染症センター都立駒込病院に勤務。2017年より東京都立多摩総合医療センターにて、集中治療やECMO Transportに携わる。COVID-19流行期には過去のI類感染症受入の経験を活かし、人工呼吸器をはじめとした医療機器の感染対策に取り組んだ。2024年4月より現所属へ出向、サイバーセキュリティ推進に従事。公開日:2024年6月14日 ※所属・役職等はすべて記事公開時点のものです
Q 集中治療の魅力とは?
私の師匠といえる臨床工学技士の上司の存在です。以前に勤めていたがん・感染症センターでは集中治療医が不在で、ICUの呼吸器管理にはその上司がほとんど関わっており、そこで呼吸器を教わったことがきっかけでした。医師と衝突することもしばしばありましたが、患者さんのためを思って仕事をする尊敬できる人です。その上司と共に当時発売されたばかりのHFNCをもって院内中の呼吸不全患者を見て回っていた日々が私にとって集中治療のはじまりだったのかもしれません。
Q 集中治療との関わり
集中治療業務、災害対策を主に担当しています。当院はローテーション制のため専従ではありませんが、RCTやECMO運用・病院前診療部会などを通して救命センター、集中治療室に携わっています。
高度医療機器を的確に扱い患者の命を守る。それが臨床工学技士の専門性
Q この道に入って感じたこと
当初は患者さんを救うために治療に携わりたいという気持ちが強かったのですが、ECMOをはじめとした臨床工学技士が扱う生命維持管理装置はその名にあるように、一部の血液浄化を除いてそのほとんどが“治療をする”わけでなく、治療が奏功するまでの間に“患者の命を守る”ためにあるのだと感じています。一方で、人工呼吸器をはじめとした高度・複雑化した医療機器は正しく扱えないと、患者さんの治療方針を誤った方向へ導いてしまいます。その点こそ臨床工学技士の専門性が強く発揮できる領域だと考えています。Q これまで所属してきた施設を選んだ理由
私が所属する病院機構では、およそ8~10年毎に病院間異動があります。そのタイミングで現在の上司に誘われました。私自身も呼吸器に長く携わるなかで、次の目標として高度救命センターで急性期の管理について学びたいと思ったことがきっかけです。
仲間を増やし、次のパンデミックや災害にむけた医療体制の強化に貢献したい
Q これから力を入れていきたい分野
大規模パンデミックなど感染症対策です。もともとの所属が感染症センターだったこともあり、以前から新興感染症対策に関心がありました。実際、コロナ禍では初期の段階より患者の受け入れが始まったため、医療機器の感染対策を取り決めたり、臨床工学技士会や厚生労働省と連携して必要なサプライチェーンの調査を行ったりしました。今回で得られた知見も多かったですが、次のパンデミックに備えることで少しでも医療提供体制に余裕を作り出すことができればと考えています。Q 今後のキャリア
1つ目に、集中治療に関わる仲間を増やすことです。自分が異動になったとしても継続した体制が続くように、集中治療専門臨床工学技士が何人もいる職場になってほしいです。2つ目は、災害時集中治療です。先ほどの感染症をはじめとした集団災害では想定外の業務増加と収容限界増加で混乱が予想されます。そんな中でも普段と変わらない診療を継続できる強固な体制を築き上げていきたいと思っています。
Q 多職種連携で大切にしたいこと
難しいことをしているわけではなく、私の場合、業務と関係ない話もする、ただそれだけです。それぞれの職種には専門性に主義主張があります。まとまる時もあれば、対立するときもあります。そんな時には心理的安全性のある関係を構築しておくほうがお互いを受け入れることができるからです。Q 印象に残る経験
短い文章で語り切れるエピソードがありませんが、当院の医師、看護師さんたちは我々のことをいつも頼りにしてくれていますし、いつでも笑顔で対応してくれます。本当に人に恵まれた良い職場だと思います。
どこから興味を持ってもよい集中治療、自らの屋台骨となる専門資格をもち患者を救う一歩目を踏み出そう
Q 次世代の仲間へのメッセージ
集中治療は呼吸・循環・代謝が緻密に連携しています。そのためか新人教育も難しく“教えて育たず、勝手にしても生えてくる”なんて言わたりもします。しかし逆を言えば、どこから興味を持ってもよいわけです。その1歩目がいずれ患者さんを救うことになります。そしてゆくゆくは集中治療専門臨床工学技士を目指してください。専門資格は壁にぶちあたり、へこたれそうになったり倒れそうになったりした時にまっすぐ立たせてくれる自らの屋台骨になります。
Q 10年後の自分へ
引退まであと20年、まだまだ道半ばです。初心忘るべからずがんばろう!